兵庫県西宮市立中学校の女子バスケットボール部で、外部コーチによる「体罰」事件があったものの、校長が部員の保護者への説明をせずに隠した形になったことがわかった。

 神戸新聞2019年5月29日『校長「部員の立場悪くなる」と体罰を保護者に説明せず 西宮市立中のバスケ部』が報じている。

事件の経過



 記事によると、事件の経過は大筋で以下の様子。

 外部コーチは、ボランティアで指導にあたっている保護者男性だという。2018年9月29日、コーチは練習中に、当時1・2年の女子生徒数人の尻を蹴るなどした。

 2018年12月になり、西宮市教委に情報が寄せられて発覚した。市教委から連絡を受けた学校側がコーチに聴き取りをおこなったところ、コーチは事実関係を認めた上で、「(被害部員の)保護者から『気合いを入れてほしい』と頼まれたから」などとした。被害者側の保護者もそうした依頼をおこなったことを認めたという。

 西宮市教委は学校側に対し、コーチを指導から外すよう認めた。しかし学校側は「コーチを支持する保護者や生徒もいる」として当初は応じなかった。

 学校側は2019年4月になりコーチを解任したものの、顧問教諭の管理下で指導にあたるマネージャーとしての待遇に変更したという。学校側は、コーチの新処遇に関する部活動関係者への説明では「体罰」事件について触れず、「外部コーチ主導ではなく、顧問教諭が主体的に指導する体制を作る」としたという。

 校長が「体罰」事件について説明しなかった理由については、以下のようなことが報じられている。

 校長は神戸新聞社の取材に「体罰があったと公に説明すると、部内で、蹴られた部員の立場が悪くなると考えた。説明すべきだった」などと話した。

神戸新聞2019年5月29日『校長「部員の立場悪くなる」と体罰を保護者に説明せず 西宮市立中のバスケ部』


実際は加害者への配慮では



 一見すると「被害部員」への配慮に見えるものの、実際は加害者やそれを支持する者への配慮だと思わざるをえない。

 部活動やスポーツでの「体罰」・暴力での「指導」は、スポーツ科学としては何の根拠もない、それどころか人権侵害の暴力行為でしかない。しかしそれを「指導」だと強弁する間違った動きが後を絶たない。

 そういう風潮を断ち切るためにも、事件の経過について、被害者を特定しないような形が可能ならばそのようにする形で、できるだけ詳細に説明し、そのような行為は許されないという風潮を作っていく必要がある。

 また加害者が「保護者から依頼された」とし、被害者側保護者もそのことを認めたというのも、重大な問題である。人権侵害・虐待を「指導」だとはき違えるような行為は、決して許されない。仮に被害者側保護者からこのような依頼があったとしても、公序良俗に反するものである。子どもは保護者の所有物ではなく、一つの人格を持った存在であることを忘れてはいけない。
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