朝日新聞(ウェブ版)2020年1月9日付が『「愛情が弁当で測れるの?」選択制の学校給食めぐり議論』とする記事を出している。

京都市の中学校給食について特集している。

「愛情弁当論」「導入費用の問題」


京都市の中学校給食は、現時点では家庭弁当と業者配送弁当との選択方式となっている。一方で小中一貫校6校については、小学校と一体の方式として自校調理方式の全員給食を実施しているという。

食育の観点や、小中一貫校とそれ以外の中学校での学校間格差・不公平感などから、一般の市立中学校へも全員給食を導入してほしいと求める声も保護者から出ている。

その一方で京都市は、「愛情弁当に意義がある」として、中学校給食は選択制を前提とする方針を示し、全員給食への移行は検討していない。また全員給食導入にかかる初期費用が莫大になると見込まれることで、予算面でも困難としている。

京都府内の自治体で中学校給食の全員給食を検討していないのは、京都市と亀岡市だけだという。

京都市では2020年2月に市長選挙がおこなわれる予定となっている。中学校給食の全員給食制の導入の是非についても、争点の一つになるとも見込まれる。

いまだに「愛情弁当」云々の論理を崩していないのも驚きである。数年の時間を要する課題だとはいえども、自校調理ないしは親子調理方式も視野に入れての全員給食導入を検討することも必要になってくるのではないか。

大阪市を例に出しているが…


記事では、大阪市での事例と対比する形でも触れている。

かつて中学校給食が未実施だった大阪市では2011年度に予算が可決成立し、2012年度より選択制デリバリー弁当での給食が始まった。その後学校調理方式(自校調理方式と近隣小学校での「親子調理方式」の併用)への切り替えが進んだことに触れた上で、記事では以下のように紹介されている。
デリバリー方式から学校調理方式への移行には、橋下徹市長(当時)の意向があったという。

事情を知らなければ、「橋下が学校調理方式の中学校給食を積極的に進めた」とも受け止められかねない。非常に紛らわしい表現となっている。

大阪市の中学校給食の経緯については、補足すると以下のような流れとなっている。

http://kyouiku.starfree.jp/d/osaka-city-jhs-lunch/

大阪市の中学校給食は、中学校給食導入を公約として掲げた平松邦夫市長が2007年末に就任し、導入の方針を模索してきた。しかし当時大阪府知事だった橋下徹が大阪市への差等補助を拒否するなどして難航した経緯がある。

紆余曲折の末に2012年度より実現にこぎ着けたものの、予算を付けた平松市長は2011年11月の市長選挙で落選し、実施時には市長が橋下徹に交代していた。

中学校給食が実施されると、選択率の低迷が指摘された。しかし橋下は弁当給食の改善に取り組まず、そのまま2014年度より全員給食に移行させたことで混乱を拡大することになった。

中学生からの不満が増大し、また市会でも取り上げられた。しかし橋下は「ご飯にふりかけをかければいい。ふりかけの持ち込みを許可すべき」「(不満を言うのは)食育がなっていない」などと見当違いのことばかり言い立てるだけだった。

2015年夏におこなわれた大阪市会の「中学生子ども市会」で、中学校給食への訴えが中学生から強く出されたことを背景に、橋下市政がやっと重い腰を上げ、学校調理方式への数カ年計画での意向を表明したという経過である。

橋下が積極的に自校給食への移行を進めたわけではない。当事者である中学生の声をはじめとした市民の声に押されて、それまで消極的だった橋下がやむなく決断したというべきものであろう。
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