熊本県長洲町立中学校に通っていた2012年に同級生から暴行を受け、後遺症で精神障害を負った女子生徒(現在20代)とその両親が、「暴力事件を同級生に調査したアンケートを学校側が廃棄したのは違法」として町に約300万円の損害賠償を求めて訴えた訴訟で、熊本地裁は2020年1月27日、原告側の訴えを一部認めて町に約11万円の損害賠償を命じる判決を出した。

アンケートを破棄した行為については違法とまでは認定しなかったものの、アンケート内容の概要を記したメモがあったにもかかわらず「ない」と虚偽の説明をして開示しなかったことについて違法と認定した。

事件の経過


事件は2012年2月に発生した。当時1年だった女子生徒は、同級生の男子生徒からたたかれるなどの暴行を受け、左足打撲などのケガを負った。その後精神的な症状が現れて入退院を繰り返すようになり、うつ状態や心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。

担任は暴行事件直後に、クラスの生徒に対して、加害者生徒から暴行を受けたことがあるかどうかなどのアンケート調査を実施した。アンケートの原本はすぐに廃棄されたものの、内容をまとめたメモが保管されていた。メモによると、加害者生徒の暴力行為について詳細に記されていたという。

被害生徒側は町に情報開示請求をおこなったが、当時の教育長は「すでにアンケート用紙は廃棄され、取りまとめた報告書もない」として、メモの存在を隠蔽していた。

判決の内容


判決では、アンケート廃棄については、アンケートの内容は担任の口頭説明と大きく変わらず、不利益を受けたとは認められないとした。一方でメモの存在を隠蔽したことについては、「事実に反する説明によって事件の状況や原因を探求するための情報を収集する利益を害された」として違法性を認定した。

認定範囲が不十分ではあるものの、「都合の悪い証拠は隠蔽する」という態度が否定されたものだといってもよい。事実を隠蔽するのではなく、当事者にできる限りの情報を開示するような方向で対応する必要がある。
このエントリーをはてなブックマークに追加 編集