教育委員会主導で小学校の統廃合計画を策定する条文を追加する「大阪市立学校活性化条例」の改定案について、2020年2月17日の大阪市会教育こども委員会で審議された。

維新と公明党の賛成で委員会可決された。自民党と共産党は反対した。

問題点


質疑では、条例で一律に定めたからといって、必ずしも地域の理解を得られることができるのかははなはだ疑問だという指摘がされた。過大規模校への対策がないこと、なども指摘された。

生野区西部の学校統廃合計画で地域からの強い疑問の声が出て市教委の思い通りに進んでいないことを踏まえ、生野区を狙い撃ちする形で「教育委員会の意見が通りにくい状態だから条例化で強制しようとしているのではないか」という疑問も出された。

また条例案では、対象校が大阪市24行政区中鶴見区以外の23区・84校に広がるとも指摘された。条例化ではより強いルールになり、不安や懸念が強まるという指摘がされた。「プランそのものが乱暴だから、保護者や地域から不安の声が出る」とも指摘されている。

議事録の改ざん?


自民党市議によると、条例案の原案が提示された2020年1月の大阪市総合教育会議で、市教委から提出された「生野区学校統廃合計画での地域住民との協議経過の議事録」について、地域住民代表が発言してもいないことを発言したかのように扱われ、まるで地域住民がおかしなことを言ったかのように印象づけられるような資料が出されたと指摘された。

これによると、生野区のある小学校のPTA会長と地域の連合町会会長が、生野区西部の学校統廃合構想について、鉄道空白地域でもある当該地域で構想されている大阪地下鉄今里筋線延伸構想を引き合いに出し、「地下鉄が延伸されない限り学校統廃合には反対」と発言したとする議事録が提出された。

疑問に感じた市議が、発言したとされる当事者に事情を聴くと、「こんなことを発言した覚えはない。言ってもないことを言ったかのようにされたのは心外。弁明の機会がほしい」という返答があったという。それを受けて、議会で参考人招致を検討したものの、維新・公明が難色を示して参考人招致ができなかったとされる。その代わりに当事者は文書で抗議の意志を示し、議会の質疑で紹介された。当事者は「地下鉄や空き家対策なども含めた総合的なまちづくりを考えるべきだと発言したことはあるが、地下鉄延伸を学校統廃合の交換条件にしたことはないしそんなつもりもない」などとしている。

小規模校が必ずしも「悪い」ものではないとする指摘


共産党市議は、少人数学級が必ずしもデメリットばかりではないとして、保護者からの声を紹介した。

ある小規模校の小学校に子どもを通わせる保護者が「入学式が温かいものだった」「クラスだけでなく学校まるごと仲良しでのびのび育っている」「小規模校のデメリットとして、いじめの時の逃げ場がないことや人間関係の固定化がよく言われる。しかしそんなことはなかった。人数が少なくて目が届くことでいじめなどはない。異年齢集団のつながりもできて人間関係も固定しない」と話していることを紹介した。

集団競技などは近隣校との合同などの工夫ができるとした上で、一人一人の学習状況に目が届くメリットもあるとも紹介した。

大阪市の「学校の適正基準」についても、適正基準を考え直すべきだと指摘した。

大規模校の問題


小規模校を機械的に統廃合しようとする一方で、大規模校の問題も指摘されている。

阿倍野区のある小学校では過大規模になり、体育の授業では複数クラスが体育館にひしめき合っていたり、プールも1授業時間を半分に割って交代で入らせるなどの状況が生まれているという。また中央区のある小学校では、校区にタワマンが次々建って児童が急増し、会議室や特別教室を普通教室に転用するなどでしのいでいる状況が出ている。そういった状況も紹介された。

疑問点は多数


2020年1月に素案が示され、2月に提出して一気に可決するような手口、とんでもないことではないか。

実質審議時間はわずか2時間ほど。しかもその中でも、厳しい指摘が多数された形になっている。議論の時間をかければその分市民からの反対の声が強まると考えたのか、一気に可決させようと図ったとしか思えない。「維新市政」のひどさを示す事例の一つでもある。
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