新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)対策として、安倍晋三首相が2020年2月27日夕方に「3月2日から春休みまでの全国一斉休校要請」を呼びかけてから、学校現場のみならず各所で混乱が続いている。

文部科学省関係者は一律の措置には懸念があるとして否定的な見解を主張したものの、首相の政治判断として押し切られるような形になったという。

法的には政府が休校を決める権限はなく要請という形でしか出せないし、休校は「要請であり義務ではない」という国会答弁が2月28日の国会でも出た。しかし首相の発言に加えて、文部科学省として休校要請文書を出したことで、実質的には強いお願いに近いような形になり、多くの地域で追随するような状況になっている。

各地の学校では、教職員が情報収集や保護者向け文書作成など、新たな仕事に追われて混乱したことが報告されている。学年末試験や高校入試、卒業式への対応についても検討しなければいけないことになる。

2月28日に突然学年最後の授業になったり、卒業式を急きょ繰り上げ実施する学校も出たという。

休み中についても、子どもだけで留守番させることになり面倒を見る人がいない、子どもの面倒を見るために休むと非正規雇用の場合は収入が途絶えることにもなるなどの問題が指摘されている。医療機関などに勤務する職員が子どもの面倒を見るために欠勤を余儀なくされる事例が多発して、医療体制も十分取れなくなるということに陥る危険性も指摘されている。

非常勤教職員についても、授業がなくなると収入が途絶えるという問題も指摘された。

学校給食についても、食材を納入する業者が突然のキャンセルで途方に暮れている、教育委員会・納入業者ともにキャンセル分の穴埋めをどうするかのめどが立っていないといった問題も指摘されている。ある地域では、前もって3月上旬分の食材発注を済ませているのに、突然のキャンセルで教育委員会も業者も頭を抱えているとされる。

茨城県水戸市の納豆製造業者は、学校給食向けに製造した納豆がキャンセルとなったことで、フードロス対策として、本店で一般向け商品を購入した客に学校給食用納豆をプレゼントする策をとった。また学校給食用牛乳が大量にキャンセルとなるが、乳牛の搾乳は毎日しなければいけないので、生乳が大量に余りかねない、需給が崩れる懸念があるとも指摘されている。学校現場での措置が、産業にも大きな影響を与えることになっている。

要請を受けてそのまま休校を決断した自治体もある。その一方で、地域の状況をみて休校を見送った自治体や、突然の提案で混乱を生んだことに苦言を呈した自治体も続々と生まれている。

休校の判断については、地域の状況によってはありうるだろう。しかし全国一斉という大がかりなことをしようとし、その一方でそれにかかる準備も十分ではなく、思いつきでおこなったと受け取れるような状況は、いかがなものか。

安倍首相は2020年2月29日の記者会見で、収入が減少した家庭への補助対策なども検討しているとは言及した。しかし後手に回っているのは否めない。
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