大阪市では大半の市立小学校(288校中284校)の入学式と、一部の中学校の入学式を4月7日に予定していた。なお市立小学校3校と、市立中学校131校中106校については、入学式は4月6日までに実施されている。

しかし4月6日夜になって、新型コロナウイルス問題に関する国の緊急事態宣言がでる見通しになったとして、突然入学式を中止した。その影響で、教職員は当日7日朝から総出で新入生に中止を電話連絡したり、中止を知らずに登校してきた児童・保護者が出たなどの混乱が生まれたと指摘されている。

経過


大阪市では入学式については、感染対策を講じて式次第などを一部変更した上で、当初予定の日時で実施するとしていた。4月6日までに実施した学校ではそのような形式でおこなった。

4月6日朝に国が「緊急事態宣言」を検討しているという報道が流れ、大阪市は4月6日昼の時点では「当日午前7時までに国の緊急事態宣言が出た場合は入学式を中止するが、宣言に至らなかった場合は実施する」と通知していた。

しかし同日夜になって、「首相が当該宣言を4月7日に発令する方針を表明したことを受けて、発令(宣言)されているとみなす」として、入学式の中止を通知した。

昼の時点での決定と、夜の時点での決定では、内容に齟齬があることになる。この時点では「出ていない」ものの、「発令されているものとみなす」という対応は昼の時点では想定されていないことになる。

松井一郎大阪市長のツイッターが中止の一報を流したのは4月6日午後6時46分だが、その時点では大阪市および大阪市教育委員会として公式の告知はなかった。

大阪市教育委員会のウェブサイトでは夜7時過ぎになって差し替えた内容を告知し、大阪市広報・大阪市教育委員会・各区役所など市関係のツイッターでも情報を流した。

大阪市教育委員会ツイッターアカウントが告知したのは4月6日午後7時41分、大阪市広報ツイッターアカウントが告知したのは4月6日午後7時49分だった。

しかし前日夜になって突然内容が差し替えられたことで、保護者や教職員にも内容が十分に伝わらない状況に陥った。

教職員は朝一番で手分けして新入生に電話連絡するなどし、保護者の側も朝8時過ぎに電話を受けて初めて把握したという声も出た。「ママ友」のつながりで連絡が回ってきて状況を知ったという声も寄せられている。知らずに登校し、学校前の貼り紙を見て初めて知った児童・保護者もいたという。「朝出勤して学校に問い合わせ電話があったことで初めて事情を把握した」という教職員の声もあるとされる。

維新市政の弊害


休校や入学式中止の方針自体は、一般的にいえば、状況の変化によっては選択肢としてありうるということまでは否定しない。

しかしこの問題は「入学式中止の是非」という問題ではなく、「それまでの状況を踏まえずに、思いつきでの一方的な決定をおこない、混乱を生み出した」という問題が、事の本質であると感じる。

維新市政の「やったふり感」「事前の調整なしに一方的なことをして不要な混乱を生み出す」という体質が、ここでも現れたことになる。

入学式中止を決めるにしても、学校現場への混乱を最小限に抑えられるような方法があったように感じる。それを、教職員の大半が退勤した前日夜になって突然「中止」を決め、しかもそれまでに出していた方針とも整合性がとれないような内容では、不要な混乱を生み出すのは必至ではないか。

大阪市といえば、2018年6月の大阪北部地震の際、当時の吉村洋文市長が「地震の際の休校は各学校ごとに判断する」事前マニュアルを無視して、また教育委員会が発災直後に「学校ごとに判断してください。授業継続を決めた学校はそのまま続けてください」とする別の通達を出していたことを無視して、教育委員会との調整なしに、また何の権限もないのに、「大阪市立学校全校一斉休校を決めた」と一方的にツイッターで流したことで、ツイッターを見た保護者から学校に問合せ電話が殺到するなどして混乱させ、結局は押し切られる形で11時過ぎに全校休校にさせたという事件があった。今回の件も、地震の時と似たような構図にも感じる。
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