Yahooニュースで「大阪市の小学校統廃合、新型コロナウイルス禍で工事始まる」が配信されている。

https://news.yahoo.co.jp/byline/koudaizumi/20200519-00179131/

これまでの経過


大阪市は維新市政のもとで、小規模校の小学校を大幅に減らす方針を打ち出している。生野区西部では、小学校12校と中学校5校を「一小一中」に対応した4小学校・4中学校に再編し、小中一貫校や義務教育学校の形も含めて、対応する小中学校でそれぞれ小中連携教育をおこなうとする「生野区西部地域学校再編整備計画」を2016年に打ち出した。

しかし地域住民からは統廃合への疑問の声が出され、また行政の強引な手法への批判・反発も相まって、当初の計画通りには進んでいない。地元地域からは計画そのものの見直しや白紙化を求める陳情が繰り返し出されている。

大阪市では維新市政のもと、2020年2月になり、統廃合には住民合意は必須ではない、行政主導でおこなえるとする条例改正案を、維新と公明党の賛成多数で可決・成立させた。自民党・共産党と、旧民主党系の流れを汲む無所属議員会派「市民の生活が第一」は条例案に反対した。

http://kyoukublog.wp.xdomain.jp/post-20769/

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条例改正は、生野区での統廃合反対の動きに呼応したものとみられる。2019年10月2日の大阪市会教育こども委員会で、維新の杉村幸太郎大阪市議が、生野区の事例について「統廃合のたびに陳情が上がるのは課題。市会で個別に判断するものではない」などと住民の声を批判するような質疑をおこなったことが発端となり、市での条例化につながった。

http://kyoukublog.wp.xdomain.jp/post-20126/

2020年4月、校舎増築工事が始まる


記事では、統廃合計画の対象校となり、統合計画によると統合後の新校として校地を使用する計画となっている西生野小学校で2020年4月下旬、統合後の児童受け入れに対応するための校舎増築工事が始まったことをリポートしている。

この工事計画は2020年2月の大阪市会で、「生野中学校区小中一貫教育校建設工事請負契約締結について」として、維新と公明党の賛成で可決した。自民党・共産党と、会派「市民の生活が第一」は反対した。

統廃合については、2020年5月時点では正式に決まっていない。また2020年5月の大阪市会では、生野区の別の小学校や西成区の小学校について、2021年度からの統廃合を明記した条例案が出されているが、当該校については言及がない。

地域からは「どさくさに紛れて校舎建設を強行するとは、まさしく火事場泥棒的なやり方」と、強い批判が出ているという。

大阪市は小規模校の統廃合をいうだけで、小規模校が教育上よくないという科学的なエビデンスを出していない。

また新型コロナウイルス問題の深刻化による休校という状況になっているもと、密閉・密集・密接の「3密」を避ける生活が求められているにもかかわらず、統合によって児童数を増やすことで「密」を高めるのではないのかという懸念と、「密」を避けるためには小規模校の方が有利ではないかという見方が示されるようになった。

生野区の地域団体などは、これまでの「小学校がなくなると地域のまちづくりにもマイナスの影響が出る」「地域の学校では、児童にしっかり目が行き届く、小規模校のメリットを生かした教育をしている」という観点に加えて、新型コロナウイルス問題という状況の下、「密」を避けるためには小規模校の方が有利とする観点も新たに盛り込み、統合はふさわしくないとする陳情を、2020年5月に大阪市会に出した。

陳情は2020年5月20日の大阪市会教育こども委員会で審議されるとみられる。

維新市政の弊害


学校の統廃合は、こどもたちの生活や地域のまちづくりにも密接にかかわってくる。一般的にいえば、一律に統廃合すべき・ないしはすべきではないということではなく、個別の学校や地域の状況に応じて個別に判断し、関係者や地域の合意を集めることが重要になってくる。しかしこのケースでは、地域から疑念が示されているものを行政側が強行しようとしていることで、問題が生じる状況になっている。

大阪市では維新市政によって、小規模校のみを狙い撃ちした行政主導の統廃合計画を正当化する条例が作られた。しかし、小規模校が一律に問題があるものなのか、子どもの教育や地域のまちづくりを総合的に考えた施策とは何かという根本的な点から、問われなければならない。

また新型コロナウイルス問題に伴って「密」を避けるという意味でも、小規模校の方が有利になるのではないかという指摘も、受け止めなければならない課題であろう。学級数の適正規模や、1学級あたりの人数についても、これまでの行政的な見解にとらわれることなく、新たな観点で再検討をおこなっていく必要があるとも見受けられる。
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