大阪市立小中学校では2020年6月1日、新型コロナウイルスによって休校していた学校を再開した。

6月の前半2週間については、1クラスを出席番号などで班に分けて午前・午後の分散登校とする方式で、午前・午後それぞれ2~3コマの授業を実施するとしている。2020年6月15日より通常授業に移行する。

その際に松井一郎大阪市長は、教育委員会を飛び越えて市長が発表する形で、「6月1日より給食を再開する」と発表していた。午前班の児童生徒は給食を食べてから下校し、また午後班の児童生徒は給食を食べてから授業に臨むという方式。

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この発表については、給食の配膳準備などで「密」が生じるのではないか、午前班と午後班の児童生徒にそれぞれ給食の準備・指導をおこなうことになって教室や食缶が足りなくなるのではないか、午前班と午後班の給食時間をずらした場合は午後の授業開始が遅れかねない、など、具体的な指導方法・運営方法について不安視されていた。

小学校では通常からおかずを一品減らしたメニュー、中学校ではパンと牛乳の簡易給食で提供することになった。

教職員や児童生徒への負担も


報道や各学校のウェブサイトなどによると、大阪市立の小中学校では各学校ごとに工夫を凝らしていたものの、やはり教職員や児童生徒には負担となる状況が生まれていた。

ある小学校では、給食時に午前班と午後班の児童を同時間帯に2つの教室に分けたが、担任教員は2つの教室を行き来して給食指導にあたっていたと、テレビ取材で紹介されていた。

別の小学校では大規模校で空き教室が確保できないことや、給食の準備・後片付けや午前・午後の児童の入れ替えにそれぞれ時間がかかることから、大阪市教委の基準では「午前中3コマ」となっていた授業時数を学校独自で「2コマ」にして、給食の準備や後片付け、児童の入れ替えの時間を十分にとる措置をとったと、当該校ウェブサイトで紹介している。

中学校の簡易給食については、コッペパン1個と牛乳。午後からの授業の生徒は、登校前に家で何か食べていない場合は、空腹で集中できないことも考えられる。

事故も発生


6月1日には複数の大阪市立小学校で、給食に関係する事故も発生している。

ある小学校では、牛乳アレルギーの申告があった1年児童について、その申し送りを見落として誤って牛乳を配膳し、児童が一口飲む事故が起きた。教員はすぐに誤配膳に気づいたが、児童は一口飲んだあとだったという。教員は児童に飲むのをやめさせ、家庭に連絡した上で児童に常備薬を服用させたものの、児童はアレルギー症状が出て救急搬送され、症状はその後落ち着いたものの経過観察で入院した。児童にとっては、入学後初めての給食でもあったという。

また別の小学校では、賞味期限が切れていたジャムを約140人の児童に誤って提供する事故が起きた。健康被害などは報告されていない。給食提供前の検品ができていなかったことで、賞味期限切れを見落としたのが原因だという。

非日常的でイレギュラーな状況の下で、給食に限らず学校教育・学校運営全般について対応すべき課題が増えたことで、事故が誘発される遠因にもなってしまったのではないかという気がしてならない。

給食再開に伴って生じる問題点をきちんと検証しないまま、「家庭からの要望」という一般論としては否定できない内容を持ち出して、市長主導で「給食再開」を言い出したことで、事故につながったという気がしてならない。
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