さいたま市教育委員会が市立小中学校に対し、新型コロナウイルス対応に従事する医療者に「感謝の意を示す」として一斉に拍手するよう求めていることがわかった。

2020年6月15日午前10時から、各学校で一斉に実施するという。当日は一斉授業に切り替わる初日でもあり、各学校では9時58分頃から校内放送で「医療従事者のおかげで通常の学校生活を再開できる」という趣旨を話し、10時に児童生徒ら約10万人が一斉に拍手することにしている。

市教委が「子どもの心を育てる教育活動の一環」として、6月10日付で校長宛に通達を出した。しかし校長や教職員・保護者からは、「感謝の意を指示・強制されるようなものなのか」という疑問が出ている。

医療関係者に感謝する事自体はともかくとして、感謝など児童生徒の内心に属する部分に関して、形式上の道徳を強要するような形で指示・強制するようなうわべだけのやり方では、逆効果にもなりかねない。

国や地方自治体の感染症対策の施策への検討・検証や、医療従事者が差別・偏見も含めた厳しい立場に置かれてしまったことなど、多面的に考えられるような力を付けていくことが重要なのに、表向きの形式だけ整えた「拍手の指示」だけで本当の意味で感謝の心が生まれるのか。むしろ「やらされている」感だけが大きくなって、おかしなことにもなりかねないという危険性も感じる。
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