教科書展示会が各地で開かれています。2020年夏は、2021年度以降使用される中学校教科書の採択の年にもあたります。

展示会で実施するアンケートで寄せられた意見も、採択の参考にされるとのこと。

中学校社会科歴史的分野について、気づいたことをメモ。

育鵬社


従来版の不適切な構成を継承。史実の扱いが雑というか、歴史学研究の成果反映よりも政治的イデオロギー優先というか、不正確な箇所が目立つ。

「大東亜戦争(太平洋戦争)」と表記するなどの特異な記述。沖縄戦の「集団自決」は「追い込まれた人もいる」など曖昧な記述。

日本国憲法の制定過程については、「GHQが押しつけたものをほぼそのまま通した」かのような、史実とはいえない記述。

これでは歴史認識も正確なものを得られないし、高校受験や高校以降での学習にも支障が出る。

内容のひどさも問題だが、2011年の八重山教科書問題や2015年の大阪市での教科書採択で不正があった問題など、過去に育鵬社教科書採択を支持する人たちからの強引な行為が繰り返されてきた。採択過程についても注視の必要あり。

学び舎


2015年に続いて2度目の歴史教科書発行。細部にまで目を配ったていねいな記述をおこなっている。史実のていねいな記述だけでなく、生徒の興味関心を呼び起こそうとする工夫が随所になされている。

記述内容をみれば、際だって「よい」と感じる。

あえて難点をあげるなら、内容はよいものながらもボリュームがあり、学力に幅がある一般の公立中学校では、教員の側の力量が問われることにもなるかもしれない。「(内容が充実しているという意味での)使いやすさ」が「(結果的にハイレベルになっているような形での)使いづらさ」にも変わりうるジレンマ、どう判断されるか。

山川出版社


高校日本史・世界史の教科書では定番の出版社、中学校歴史教科書に初参入。

高校の日本史・世界史教科書としては最も多く採択・使用されている『詳説日本史』『詳説世界史』への接続を考慮しているとうたい、記述やデザイン・資料などの構成は高校教科書の構成に合わせている。

よく言えば「記述がまとまっている」、批判的にいえば「記述が無味乾燥だと評する人もいる」といった、高校教科書の特徴を踏まえて中学生向けに書き換えたような形となっている。

沖縄戦の「集団自決」の記述がなかったことがどう判断されるか。
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