フジ住宅(大阪府岸和田市)の職場内で、組織的に民族差別的な文書を回覧させるなどして苦痛を受けたとして従業員が訴えている「ヘイトハラスメント」訴訟の判決が、2020年7月2日午後3時に大阪地裁堺支部で言い渡されることになっている。

判決を前に、朝日新聞2020年6月29日付が特集記事『会社のヘイト文書で「精神的苦痛」 配布は違法?争点に』を掲載した。

https://www.asahi.com/articles/ASN6W64YGN6TPTIL00H.html

会社では遅くとも2013年以降、業務内容とは全く無関係なのに、民族差別を煽るような書き込みが記された文書などを従業員に回覧させるなどしていたとされる。

大阪市での教科書採択不正とも密接な関連


また「ヘイトハラスメント」問題は、大阪市の教科書採択にも密接につながっている形になっている。

原告側は「ヘイトハラスメント」の一環として、2015年度中学校教科書採択の際、会社ぐるみで従業員を業務時間内に大阪市の教科書展示会会場に動員し、育鵬社教科書を支持する内容でのアンケートを記入するよう強要されたとも主張している。

この問題では、フジ住宅関係者がアンケート回答用紙を一度大量に会社に持ち帰り、会社から指示されたひな形に沿って同じ内容を書き込んだ上で、後日再び会場に行って投函したことが指摘されている。

「ヘイトハラスメント」訴訟の中で、育鵬社の関係者からフジ住宅関係者に対し、アンケートの多寡が採択を左右するという指示があったことが指摘された。

さらに大阪市は、アンケート集計担当者が「酷似した筆跡で内容もほぼ同じものが大量にある」などの不審点に気づいて集計チーム責任者に相談したものの、責任者がそのまま集計させ、「育鵬社支持が7割」というアンケート結果を教育委員会会議に提出していたことも明らかになっている。

背景には、フジ住宅の会長が、育鵬社教科書の母体となる「日本教育再生機構」に関与していることが指摘されている。

裁判の争点


原告側は「人種差別・民族差別的な言動にさらされない権利」があるとして、会社側は職場でのセクハラやパワハラなどを防止する義務があるのと同様ヘイトスピーチに晒されないよう従業員を守る義務がある、会社ぐるみで民族差別的な文書を回覧したことは人格権侵害だと訴えた。また教科書展示会への動員についても、自らの意思に反する行為を強要されたことで、憲法の思想・信条の自由を侵害され、また人格権の侵害にもあたると訴えた。

その一方で、フジ住宅側は以下の内容を主張して争っている。
被告側は文書は史実に基づく「政治的な意見論評だ」としてヘイトスピーチの該当性を否定。文書を読むことも強制しておらず、会長らの表現の自由を制限してまで原告の法的権利を保護する必要はないなどと反論している。教科書展示会の動員にも参加を強制した事実はなく、展示会への参加を呼びかけること自体は違法にはあたらないとしている。

しかしながら、フジ住宅側の出した文書が一部「朝日新聞」の資料写真にも写り込んでいるが、当該文章は特定の集団を根拠なく下にみる・感情的に中傷しているものだと受け止められるような差別的なものとなっている。政治的な論評でもない。ヘイトスピーチとみなされてしかるべき内容となっている。悪質な人権侵害というべきものではないか。

また、2015年の大阪市での育鵬社中学校教科書採択ともつながっているという指摘も重大な点である。育鵬社教科書を、ヘイト勢力と維新に近い勢力がごり押しした形になっていることは、問題といえるだろう。

原告側にとってできるだけよい判決が出ることを願っている。
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