大阪市での2020年中学校教科書教科書採択を決める教育委員会会議は、8月25日(火曜日)午後2時30分から大阪市教育センター2階講堂で実施すると発表された。

https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000512015.html

なお大阪市ウェブサイトでの告知ページでは、日時や場所については今後予定変更がありうる、変更の場合は改めてウェブサイトで告知するとも言及している。

大阪市では前回2015年採択で、育鵬社の歴史・公民教科書を強引に採択させる策動がおこなわれ、いずれも同社が採択された。内容もひどい上に使いづらいと悪評の育鵬社教科書を食い止められるか、現場の意向を受けた教科書が採択されるかどうかがポイントとなっている。

前回2015年の育鵬社採択策動


前回2015年採択では、育鵬社を強硬に支持する教育委員長が議論をリードし、審議の場で他社教科書を名指しで批判する場面も見られた。また、別の教育委員が産経新聞系列会社幹部を歴任した経緯を持ち、当該教育委員が当時、育鵬社教科書母体となる「日本教育再生機構」の雑誌に寄稿していたことも指摘された。

さらに2015年9月に報じられた、大阪府岸和田市に本社を置く住宅販売会社「フジ住宅」での「ヘイトハラスメント問題」との関連も指摘されている。フジ住宅が従業員を教科書展示会に動員し、育鵬社教科書を支持する内容のアンケート回答を大量に書かせていたと指摘された。教科書展示会でのアンケート集計の際、大阪市教委事務局の集計担当者が「酷似した筆跡で、ほぼ同一内容の文面が20枚以上ある」異変に気付き集計責任者に報告したものの、責任者はそのまま集計するよう指示し、「育鵬社を支持する意見が7割あった」と教育委員会会議に報告していた問題も指摘された。

さらに教育委員会は、当時の大阪市長・橋下徹に事前に了解を取った上で、「歴史・公民では、2番目に評価の高い教科書を市費で購入して副読本扱いにする」という異例の附帯決議を可決したという不審点もあった。

これらの不審点については大阪市会でも繰り返し追及され、マスコミ報道もされている。

さらにフジ住宅の「ヘイトハラスメント」訴訟では2020年7月、教科書展示会への従業員動員の違法性を指摘した内容も含めて、会社組織と同社会長が連帯して損害賠償を支払うよう命じる判決が大阪地裁堺支部で出された(被告側が控訴)。

2020年採択に向けて


2020年採択では、教育委員は2015年当時とは入れ替わっている。今回については、育鵬社を推すような不穏な動きは現時点では表だって見えてこない。

市会での追及や、直接的には大阪市役所外部での労働問題や人権・差別問題だといえども教科書採択とも密接に関係した訴訟が起きたことなど、普通に考えれば2015年当時と同様の強引な策動は難しい状況にはなっている。しかし首長が維新でもあり、引き続き注意が必要な自治体の一つともなっている。

現在の教育委員は、高校教科書採択や、2017年小学校道徳・2018年中学校道徳・2019年小学校の各教科書採択の議事録を読む限りは、あまり極端なことはいわず、「現場の教員の使いやすさが重要だと考えた」「よいと感じた教科書は、審議会答申であげられたものを含めて複数あったが、最終的には答申を尊重して判断した」といった趣旨の発言がいくつかあるようにも見受けられる。その一方で、この対応が中学校教科書採択に関しても同じようにされるかは、ふたを開けてみないと不透明な部分もある。

正直言って、実際に結果が出るまでは気が抜けないという印象を受ける。よい結果になるよう願いたい。
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