「子どもと教科書全国ネット21」が2020年9月17日時点でまとめた推計によると、2020年度の中学校教科書採択で、育鵬社の歴史教科書は採択冊数で約6分の1、公民教科書は約12分の1に激減することがわかった。

公立採択地区単位では、歴史は8都府県・21地区から3県・6地区(栃木県1地区、石川県3地区、山口県2地区)に、公民は7都府県・19地区から4府県・4地区(栃木県・大阪府・山口県・沖縄県、各1地区ずつ)となった。

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冊数では、公立採択地区判明分に私立などを足した推計で、歴史教科書は約7万2500冊(採択率約6.4%)から約1万2000冊前後(約1%)、公民教科書は約6万1200冊(約5.8%)から約5000冊前後(約0.5%)にとどまる見通しとなった。

育鵬社教科書の内容は、あまりにも一面的なものである。極右的な思想に基づき、戦争賛美や人権軽視などの記述という意味でも問題がある。また標準的な見解からかけ離れたイデオロギー押しつけになっているということで、中学校で学ぶ内容についても不正確ないしは生徒の理解を妨げかねない記述も多く、授業や高校受験、高校以降の学習にも支障が出るという指摘もされてきた。

今回は、注視されていた採択地域の大半で育鵬社教科書を阻止することができた。横浜市や藤沢市、大阪市・呉市・松山市などでの採択を阻止したことや、名古屋市でギリギリのところで採択を止めることができたことなど、教職員や保護者・市民の声が届いた成果だともいえる。

その一方で、採択推進側は前回と比べて露骨な活動をおこなっていなかったともされる。その背景として、2020年9月まで続いた安倍政権によって教科書検定への介入が強まり、「普通の教科書」も極右派がある程度容認できるような記述に変わっていることで、あえて強引な採択策動などのリスクを冒してまで育鵬社を推す動機が薄まったのではないかという指摘もある。

この指摘も気がかりな点である。教科書の内容・記述については、教科書検定のあり方などの問題も含めて引き続き注視する必要がある。
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