日本学術会議が推薦した会員候補者を菅義偉首相が任命拒否した問題に関連して、内閣府の担当部署はそのまま首相官邸に名簿を提出し、官邸レベルで拒否していたと指摘された。

日本学術会議は科学者の代表機関として、人文・社会科学、自然科学の各分野の専門家の見解をとりまとめ、行政・産業・国民生活などに関する提言などを発信する機関となっている。内閣総理大臣の所轄となっているものの、運営については政府から独立しておこなわれる。

会員は定員210人。日本学術会議の推薦原案を元に内閣総理大臣が任命し、6年の任期とし、3年ごとに半数ずつ任命する形になっている。

日本学術会議から提出された推薦者名簿は、内閣府日本学術会議事務局、内閣府人事課でそれぞれ決裁を経たのち、首相官邸での決裁を経て、内閣総理大臣が任命することになる。首相による任命については「形式的なもの」とする見解が、1983年の国会答弁でおこなわれている。

今回の問題については、内閣府関係者からは「推薦者名簿の中身には一切手を付けていない。そのまま首相官邸に上げた」とする証言が出たという。首相官邸レベルで拒否したことが強くうかがわれるものとなっている。

拒否の理由は政府側からは「個別事案の詳細についてはコメントしない」という対応となっている。その一方で拒否された会員候補者はいずれも、安保法や改憲などのテーマで、政府見解にとって不都合とも受け取れる意見表明・言論活動などをおこなっていたことが引っかかったのではないかとも指摘されている、

また、安倍政権時代の2016年にも、一部の会員が定年を迎えることによって補充会員を選定する必要が出たが、日本学術会議から出された補充候補者の一部を首相官邸側が拒否し、差し替えを求めてきたという証言も新聞報道されている。日本学術会議側は差し替え要求に応じず、欠員のままになった。

内閣が候補者名簿をチェックして任命拒否や内々で差し替え要求をおこなうということは、それ自体が重大な圧力となる。学問の自由にとって重大な問題である。

菅首相の就任早々にこういう大きなことが発覚しただけでなく、安倍前首相の時代にもそういうことをしていた疑惑が浮上したというのは、真相究明の上で再発防止策を図るべき案件ではないか。
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