大阪市を廃止し現大阪市域に4つの特別区を設置することの是非を問う住民投票が2020年11月1日に実施された。投票の結果、大阪市廃止「反対」が多数となり、大阪市廃止案は否決された。大阪市は政令指定都市として存続することになる。

仮に大阪市廃止が実現された場合、特別区移行の際にあらゆる行政サービスがバラバラにされ、4つの特別区に組み直して移行するだけでも膨大な労力と費用、それに伴う混乱が生じると指摘されていた。

教育や子どもの分野でも例外ではない。「教育委員会4分割と、配置される職員数が同規模自治体と比較して格段に少なくなる予定となっていることで、大阪市廃止推進派は教育委員会分割でニアイズベターとなって『いじめや学力向上などのきめ細かな体制が取れる』と主張しているが、逆にできないことになる」「児童相談所4分割で、大阪市としての増設・体制拡充と特別区への移行準備を同時に実施する過大負担。専門職育成が追いつかずバラバラになること」「市立図書館24館が4分割となることで、現在は中央図書館(西区)を核にほかの地域図書館が分館扱いで存在する体制になっていることで、図書館蔵書冊数や運営経費の偏りが生じること。運営システム組み直しなどに伴う混乱」「文化財担当や市史編纂などの専門職も分散されかねない」「保育所では、自宅が行政区の境界付近などの事情で隣の区の保育所を希望する場合は入所できるが、別の自治体となる特別区になれば入れるかどうか入所体制が不透明」などが指摘されていた。

大阪市の廃止が否決されたことで、特別区移行の場合に決定的となるような懸念については終結したことにはなる。

しかしながら、これまで維新政治のもとで、大阪市のままでも、大阪市の教育施策には困難と混乱が持ち込まれてきた。

「チャレンジテスト」「大阪市統一テスト」などテスト成績一辺倒の対応押しつけ、学校選択制実施、地域住民の反対・疑問の意見を押し切る形での小学校統廃合計画とそれを容易にするための条例制定、教職員・学校現場への締め付け強化など。

これらの困難と混乱は、特別区への移行の有無にかかわらず続くことになる。現に生み出されている困難と混乱について、できるだけ早く収拾させる地道な取り組みが必要になってくる。
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