文部科学省は2020年12月25日、教員免許失効後3年経てば再取得可能とする現行規定を「それ以上の長期」もしくは「永久的に不可能」に見直すことを狙った、教育職員免許法改正案の通常国会提出を断念した。

児童・生徒へのわいせつ行為をおこなった教師が復帰している事例も相次いでいることから、わいせつ行為や性的虐待への対策として検討されてきた。

しかし、わいせつ行為をおこなって懲戒免職になった教員の教員免許失効期間を「無期限」とすることは、刑期満了から10年経過すると刑罰の言い渡しの効力が失われ欠格規定などが解かれるとするとする刑法上の「刑の消滅」規定との齟齬が出るという指摘があり、断念した。

また文部科学省は、「小児性愛障害」と診断された人は教員免許を取れないようにすることも検討していた。しかし内閣法制局や厚生労働省からは、定義や診断が難しいとする慎重論が出て、これも断念した。

一方で、懲戒免職となって官報に告示された教員のデータベースを教育委員会が閲覧して教員採用の際の資料にするシステムについて、わいせつが理由の免職の場合はそのことが容易にわかる仕組みを作ることを新たに検討した。

人権を守るためにおこなおうとした措置が、ほかの人権との衝突によってできないという残念な状況になっている。一般的にいえば犯罪者にも人権があるというのはそうなのだろうが、このことによって被害者や第三者の人権を傷つけてもいい、もしくはそのような状況を作りかねない状態を生み出してもよいとも受け取れるようなことは、非常に残念だと言わざるをえない。

しかも児童生徒へのわいせつ犯の場合は、再犯率が高い、加害者の居直り度合い・無反省も目立つなどの特徴があるように感じる。

性的虐待行為をおこなった教師が、教育委員会の隠蔽で転勤などですんだ場合、依願退職が認められたのちにそのことを隠して他地域で再就職した場合などに、新たな赴任先で同様の事件を起こしたケースは、報道されただけでもいくつもある。

刑法上の規定などはそれはそれとして、被害者の立場に立ち、また新たな被害者を生まないようにする形で、少しでも必要な手立てを取れるような体制ができることを願う。
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