朝日新聞2020年12月29日付に『歴史教科書「なぜ採択?」育鵬社版を継続の大田原市に声』が掲載されている。

https://www.asahi.com/articles/ASNDX7TQ6NDPUUHB01G.html

2020年夏には、2021年度以降4年間使用される中学校教科書採択が実施された。栃木県大田原市では、社会科の歴史的分野・公民的分野ともに育鵬社を継続採択した。このことについて、市民からの声を交えながら記事にしている。

大田原市では2005年、当時の「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した扶桑社版の歴史・公民教科書が採択された。市町村単位の採択地区では全国ではじめて採択した地区の一つともなった。その後「つくる会」が内部分裂したことに伴い、2011年度採択からは、同会旧反執行部派の流れを汲む「日本教育再生機構」が編集した育鵬社版歴史教科書が採択され続けている。

2010年代には全国的に、「つくる会」の自由社は採択冊数を激減させる一方で、育鵬社が採択冊数を伸ばす形になり、警戒されてきた。

育鵬社教科書については、▼歴史では「大東亜戦争」の表現、日本国憲法の成立過程をいわゆる「押しつけ憲法論」で記述していること。▼公民では「立憲主義」の記述が不正確など、いわゆる極右的・歴史修正主義的な記述が随所にみられることが問題視されてきた。

さらにそれ以前の問題として、中学校段階で学ぶべき内容についての記述が薄かったり、不正確ないしは生徒に誤解を与えかねないと取れる荒っぽい説明をしている箇所が多々みられることから、学習という観点からみても使いにくい教科書だとする評価・指摘もされてきた。

2020年の教科書採択では全国各地で「育鵬社離れ」が進んだ。横浜市・大阪市をはじめ懸念となっていた地域の多くで継続採択を取りやめ、また新規採択の危険性があると指摘された名古屋市でも採択には至らなかった。

育鵬社のシェアは大きく減ったものの、大田原市のほか、石川県や山口県のいくつかの採択地区では継続採択がおこなわれた形になった。

育鵬社教科書の問題については、引き続き注視していく必要があるといえる。
このエントリーをはてなブックマークに追加 編集