東洋経済Online・2021年1月1日付で『小学生が「死にたい」ミニバス指導の壮絶な実態』という記事が配信されている。

https://toyokeizai.net/articles/-/398967

「小学生だった子どもが、所属していたミニバスケットボールクラブで指導者から暴力・パワハラを繰り返し受けたことで、精神的な症状を発症して治療している」という父親の訴えを引きながら、スポーツ指導での指導者の暴力行為について論じている。

記事で紹介されている事例


この事例に出てくる小学生が所属していたミニバスケットボールクラブでは、当該チームを指導するコーチから、練習試合を1日5試合おこなわせる、この児童にだけ試合に出させずにシャトルランを命じる、「このままじゃポジションなくすぞ!」と怒鳴られるなどの行為があったという。

児童は体調を崩し、保護者が心療内科を受診させた。うつ病と診断されたという。医師からは「家庭以外のところでのストレスではないか」と指摘され、回復に数年スパンの治療が必要だと診断された。

児童の父親はコーチの暴力を訴えたいと思っていた。コーチの行為はやりすぎではないかと思っている保護者は自分のほかにもいたと聞いたものの、「被害を訴えることで、コーチの指導で強豪私立中学校などをめざす親子を妨害して、同じ地域に住む保護者同士の対立を生む」と懸念したことで、直接の抗議はできなかったという。また競技機関の相談窓口や弁護士など第三者を入れての調査も模索したものの、調査によって児童が調査員に暴力の実態を証言する必要が生じることで、うつ状態でPTSD様の症状も出ている児童の心身的な負担になりかねないと判断し、断念したという。

当該児童はバスケットボールチームを退会したものの、父親が顔見知りの保護者から聞いたとする情報では、チームでは相変わらず暴力的な指導が続いているという。

事件は氷山の一角


記事で紹介された事例は、決して特異な事例ではないと考えられる。

報道で明らかにされた範囲だけでも、競技種目の形態を問わず、学校での部活動や地域の少年スポーツクラブなどでの指導者の暴力行為やハラスメントを伴う「指導」での被害は、しばしば報道されている。

中には、被害者が自殺に追い込まれたり、精神的な症状を発症して長期療養を余儀なくされるなどの事例もある。

被害訴えまでに至ったのは氷山の一角である。記事で指摘されている事例のように、被害を訴えたくても、関係者との対立を懸念して、被害に遭った児童の心身の状態などを考慮して訴えられないという事例もしばしばある。

被害を訴えた児童生徒や保護者に対して、加害者の指導者寄りの同じ部活動やスポーツチームの関係者が加害者を正当化し、被害訴えを「活動への妨害・撹乱行為」扱いで攻撃して被害者に二次被害を与える事例も珍しくない。

「競技成績を上げるためには暴力が必要」とばかりの非科学的な信仰がまかり通っているところや、全国区や全県レベルの強豪といわれるところでスポーツ推薦での進学なども狙うようなところだと、これらの加害者正当化・被害者攻撃傾向はさらに先鋭化する。

暴力がまかり通るような「指導」体制は根絶しなければならない。そのためには、人権を尊重すること、また科学的な理論に基づいた指導をおこなうこと、勝利至上主義的な風潮を変えていくことなど、やるべきことは多数ある。