「千葉市立小学校在学中で同級生からいじめを受け、学校側に相談しても不適切な対応をされたことで、不登校になりPTSDを発症した」などとして、いじめ被害に遭った元児童が、加害児童側と千葉市を相手取り約1400万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は2021年6月3日、一審では認めなかった学校側の責任を認め、加害児童の保護者と千葉市が連帯して約388万円の損害賠償を命じる判決を出した。

いじめ事案の経過


元児童は小学校5年だった2012年、同級生から暴力を振るわれたり、後ろの席から消しゴムや鉛筆を投げつけられるなどの行為を繰り返し受けた。担任教諭に相談しても「そんなことをいちいち言いに来なくてもいい」と発言を受けるなど、いじめに対応しなかったと訴えた。元児童はいじめのフラッシュバック症状などに苦しめられ、PTSDを発症したと訴えていた。

一審千葉地裁では同級生のいじめ行為を認定して加害児童側の保護者に約30万円の損害賠償を命じた、一方で一審では学校側の責任は認定せず、千葉市に対する部分は請求を棄却していた。

高裁判決では、いじめを認定した上で、担任教諭の対応についても不適切だと指摘した。

教諭の対応について「暴力や暴言をやめさせるために、加害児童に強く指導すべきだった」「被害児童の訴えにもっと真摯に対応すべきだった」と指摘した。担任教諭の対応によって、児童が学級内で孤立感を抱き精神的苦痛を受けたと認定した。

被害児童のPTSDの発症そのものについては認定しなかった。その一方で、頭痛や睡眠障害などの「PTSDに準じる症状が続いている」と認定した。

不適切対応が認定されたのは重要


当該いじめ案件について担任教諭の不適切対応が認定されたのは、当該個別事案という意味だけにとどまらずいじめ対策全体として、極めて重要な内容を含んでいるのではないかといえる。

いじめの被害訴えについて、被害者に我慢を強いるなどして放置するという対応が誤りであることが法的にも認定されたことは大きい。
このエントリーをはてなブックマークに追加 編集