文部科学省は2021年9月8日、中学校社会科および高校地理歴史科・公民科の教科書5社29冊の記述について、「従軍慰安婦」や「強制連行」といった用語の訂正申請があり、いずれも承認したと発表した。

この間の経過


この問題では2021年4月、維新の馬場伸幸衆議院議員(維新幹事長、大阪17区選出)が「従軍慰安婦」や「強制連行」といった歴史用語の記述をやり玉に挙げる質問主意書を出し、政府も同年4月27日付で「不適切」とする答弁書の閣議決定をおこなっていた。

さらに2021年5月10日には、質問主意書と答弁書の内容を踏まえて、衆議院予算委員会で維新の藤田文武衆議院議員(大阪12区選出)が「教科書の記述は不適切」だとする質疑をおこなった。菅義偉首相や萩生田光一文部科学相は「不適切」だとして、次年度以降の教科書検定で対応していきたいとする答弁をおこなった。

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これらを背景として、文部科学省は2021年5月、教科書会社向けに説明会を実施した。説明会では訂正期限について「2021年6月末まで」と示し、訂正勧告の可能性にも言及したという。

なお、これらに先立つ2014年、安倍晋三内閣のもとで、教科書の記述内容については、意見の分かれる内容などについては政府見解に沿った内容を記載するよう求める方針が出ている。

そのことを受けて、教科書会社が訂正申請をおこなったことになる。報道によると、「いわゆる従軍慰安婦」とする表現を削除したり変更した教科書や、従来の記述に政府見解を併記するなどの対応を取った教科書などがあるという。

私見


教科書の内容については、本来ならば、各教科や分野・領域を構成するベースとなっている学問の研究内容を踏まえたものであることが重要である。

しかし今回の経過をみると、政治的な意向が先にあり、教科書の側がそれに翻弄されてしまっているような状況になっている。維新が音頭を取る形で内閣を動かし、そのことによって教科書の記述が変えられてしまうというのは、極めて危険な動きであると言わざるをえない。

(参考)
◎「従軍慰安婦」などの記述削除 教科書会社5社、閣議決定で―文科省(共同通信 2021/9/8)
◎「従軍慰安婦」「強制連行」 教科書会社5社の訂正申請を承認(NHKニュース 2021/9/8)
◎「従軍慰安婦」「強制連行」5社が教科書訂正 政府答弁受け(朝日新聞 2021/9/8)
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