大阪市教育委員会が、市立中学校夜間学級2校の統廃合計画を検討している。
これに対して2校の在校生や近隣の夜間学級在籍者らが反対を訴える署名活動をおこなっていると報じられた。産経新聞2021年12月18日『「大切な学びの場を奪わないで」 天王寺、文の里の2夜間中学統廃合計画 生徒ら反対訴え署名活動』によると、2021年12月18日には天王寺駅(大阪市天王寺区)周辺で、通行人に署名を訴えた。
中学校の夜間学級は、終戦直後の混乱などで義務教育を受けられなかった生徒らを主な対象としてきた。当初は関係者の自主的・自発的な取り組みで始められたものの、時代が下ると行政が公的に設置する例も増えた。また時代が下ると、不登校などで義務教育を受けられなかった学齢超過者や、本国で義務教育を十分に受けられない状態で来日した外国人生徒などにも門戸を広げ、学びを保障してきた。
大阪市教育委員会では4ヶ所に中学校夜間学級が設置されているが、このうち、天王寺(天王寺区)と文の里(阿倍野区)の両中学校の夜間学級を統合する構想が持ち上がった。新しい夜間学級は、もと日東小学校(浪速区)の校舎を転用して設置される予定の不登校特例校に併設されるとした。
2024年の開設を構想し、市教委はすでに、両校の在籍生徒への説明会や、個別面談で新設校への通学意向などの聴き取りをおこなっているという。
しかし生徒からは「新設校では通えないおそれがある」などの統廃合反対の声が相次いでいるとされる。
産経新聞ではある在校生の声が紹介されている。自身の持病と家族の介護を抱えながら通学し、ヘルパーが在宅している時間に自宅に戻る必要があることから授業を途中で切り上げながら通学している状態だという。「学校がもっと遠くなったら通えない。学校に来るなと言われているのと一緒だ」と訴えている。
新設校は、物理的な距離でいえば現行の両校とも2-3km程度しか離れていない距離ではある。「条件に比較的恵まれている人の感覚」ならそれほどたいした距離ではないのかもしれない。しかし身体的事情や家庭的な事情などの困難を抱えて通学する人たちにとっては、通学そのものが危うくなりかねない重大な困難として立ち塞がるということになる。そのことで、学ぶ権利や学ぶ機会を奪いかねないということにもなってしまう。しかも、より困難な条件に置かれた人たちの「学びの場」でもあり、よりていねいに保障する手立てを取っていく必要があるのに、それに逆行するようなことはいかがなものかという印象を受ける。
大阪市教委は、統廃合の白紙化という選択肢や、仮に統廃合が避けられないと判断したとしても在校生を機械的に新設校に転籍させるのではなく卒業まで現在の学校に通学できるようにする手立てなども含めて、在校生の不利益にならないような方策をていねいに検討していく必要があると感じる。
これに対して2校の在校生や近隣の夜間学級在籍者らが反対を訴える署名活動をおこなっていると報じられた。産経新聞2021年12月18日『「大切な学びの場を奪わないで」 天王寺、文の里の2夜間中学統廃合計画 生徒ら反対訴え署名活動』によると、2021年12月18日には天王寺駅(大阪市天王寺区)周辺で、通行人に署名を訴えた。
夜間学級統廃合の背景
中学校の夜間学級は、終戦直後の混乱などで義務教育を受けられなかった生徒らを主な対象としてきた。当初は関係者の自主的・自発的な取り組みで始められたものの、時代が下ると行政が公的に設置する例も増えた。また時代が下ると、不登校などで義務教育を受けられなかった学齢超過者や、本国で義務教育を十分に受けられない状態で来日した外国人生徒などにも門戸を広げ、学びを保障してきた。
大阪市教育委員会では4ヶ所に中学校夜間学級が設置されているが、このうち、天王寺(天王寺区)と文の里(阿倍野区)の両中学校の夜間学級を統合する構想が持ち上がった。新しい夜間学級は、もと日東小学校(浪速区)の校舎を転用して設置される予定の不登校特例校に併設されるとした。
2024年の開設を構想し、市教委はすでに、両校の在籍生徒への説明会や、個別面談で新設校への通学意向などの聴き取りをおこなっているという。
しかし生徒からは「新設校では通えないおそれがある」などの統廃合反対の声が相次いでいるとされる。
産経新聞ではある在校生の声が紹介されている。自身の持病と家族の介護を抱えながら通学し、ヘルパーが在宅している時間に自宅に戻る必要があることから授業を途中で切り上げながら通学している状態だという。「学校がもっと遠くなったら通えない。学校に来るなと言われているのと一緒だ」と訴えている。
学ぶ権利に十分に配慮を
新設校は、物理的な距離でいえば現行の両校とも2-3km程度しか離れていない距離ではある。「条件に比較的恵まれている人の感覚」ならそれほどたいした距離ではないのかもしれない。しかし身体的事情や家庭的な事情などの困難を抱えて通学する人たちにとっては、通学そのものが危うくなりかねない重大な困難として立ち塞がるということになる。そのことで、学ぶ権利や学ぶ機会を奪いかねないということにもなってしまう。しかも、より困難な条件に置かれた人たちの「学びの場」でもあり、よりていねいに保障する手立てを取っていく必要があるのに、それに逆行するようなことはいかがなものかという印象を受ける。
大阪市教委は、統廃合の白紙化という選択肢や、仮に統廃合が避けられないと判断したとしても在校生を機械的に新設校に転籍させるのではなく卒業まで現在の学校に通学できるようにする手立てなども含めて、在校生の不利益にならないような方策をていねいに検討していく必要があると感じる。