新型コロナの影響で大学入学共通テストを受験できなかった受験生への救済措置として、文部科学省は2022年1月、個別試験のみで合否判定を可能にするなどの措置を各大学に要請した。

それに対して受験生らからは不安が指摘されている。

経過


大学入学共通テストは2022年1月15・16日に本試験が実施されることになっている。病気やケガなどの事情で本試験日程を受けられなかった受験生には追試験の日程も組まれている。

2020年1月頃から新型コロナウイルスの問題が生じている。2021年12月に発見された突然変異株「オミクロン株」の問題や、また2022年1月頃から再び新型コロナウイルス感染者数が増加傾向になっている状況にもなるなど、深刻化している。

受験生にとっても、入試を受けられない状況が生じてしまうことにもつながりかねない。新型コロナウイルスの状況によっては、大学入学共通テストの本試験・追試験ともに受けられない状況が生じてしまう受験生が出るという危惧もされている。

そのことに対応し、共通テストを受験できなかった受験生には個別試験のみで合否判定することを検討するよう求めた。

不公平になるおそれが指摘される


しかしその一方で、通常通り共通テストを受験した受験生との間で合否判定基準が曖昧・不公平になりかねないこと、共通テストの意義を根本から否定しかねないような措置になることなど、重大な問題が指摘された。「意図的に共通テストを棄権して、個別試験のみでの判定狙いに切り替えれば、有利になる可能性もあるのではないか」とも指摘された。

文部科学省は、不安の声に対応する形で、「本試験・追試験とも新型コロナウイルスの影響で受験できなかった受験生」および「一方の日程は新型コロナウイルスによって受験できなかったが、もう一方の日程もインフルエンザやケガなど別のやむを得ないと認められる状況で受験できなかった受験生」を前提にする措置だと表明した。共通テストの欠席を認める基準については、医師の診断書の提出や担当保健所名称の申告などの厳格な措置をとるとし、「意図的に共通テストを棄権して個別試験のみでの判定狙いに持ち込む行為」はできないようにするとした。また特例措置を適用する受験生の合否判定については、通常の受験生とは別枠にすることなどを要請するともした。

文部科学省の基準では、個別試験一本の救済措置の対象になる受験生は「理論的に生じる可能性があるが、実際に生じる可能性は極めて少ない」と判断しているともされる。

しかしそれでも、合否判定で不公平が生じかねないという根本的な問題が消えたわけではない。また試験実施要項がすでに発表された後で、試験本番直前に判定方法を変更するというのも、問題が生じるということにもなる。

やむを得ない理由を抱える受験生に対して可能な限りの救済措置をとるという発想自体は間違いとはいえないだろうが、今回の文科省の急な方針変更・混乱ともいえるような対応はいかがなものなのだろうかというような印象も受ける。
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