2022年度大学入学共通テストの「世界史B」の問題が、試験時間中に外部に流出した疑いがあることが、2022年1月26日までにわかった。試験実施主体の独立行政法人大学入試センターが調査を進め、警察も偽計業務妨害の疑いを視野に入れているという。

事件の経過


報道によると、試験問題をインターネット経由で受け取ったことに気づいた複数の人物が、大学入試センターなどに申告して事態が判明したという。

試験問題を受け取った人物は少なくとも2人いるという。いずれの人物も東京大学の学生で、東京都内の会社が運営する家庭教師の仲介サービスに登録していた。

このサービス経由で「高校2年の女子生徒」を名乗る人物が2人の学生に接触し、この人物が学生に対して「(家庭教師を依頼するための)テストとして、1月15日に世界史と現代文の問題を解いていただき、大丈夫そうなら指導をお願いしたい」と打診したという。

2022年1月15日午前11時過ぎに、インターネットの通話アプリ「スカイプ」経由で、世界史の問題がそれぞれの学生のところに届いた。学生はその問題を解いて返信した。

問題が送られてきた時刻は、大学入学共通テストの1日目の「地理歴史・公民」の試験時間中だった。学生は、そのときは共通テストの問題だとは気づかずに解答した。

その後、依頼者から「13時15分頃から現代文もお願いします」「英語も追加でお願いします」などの連絡があった。学生はそれぞれ、「予備校が同日におこなっている模擬試験かもしれない」と不審に感じて「この結果はどのように使うんですか?」などと問い合わせると、相手からの連絡が途絶えた。共通テストの問題だとは想像もしなかったという。

学生は不審に思って家庭教師仲介サービスの運営会社に相談した。さらに翌日になり、自分の解いた問題が共通テストの問題だったことに気づくと、大学入試センターにも届け出た。

仲介会社や大学入試センターなどが、事実関係を調査しているとされる。また大学入試センターから警察に被害届が出され、警察が偽計業務妨害容疑で捜査している。

別の複数の学生にも接触か


また2人とは別の複数の学生のところにも家庭教師仲介サービス経由で同様の依頼があったが、その学生は解答しなかったことも指摘された。

ある女子学生によると、同様に「高校2年の女子生徒」を名乗る登録者から「1月15日・16日に家庭教師の体験授業として、テストの問題を解いてほしい。その内容次第で正式に依頼するかどうか考える」と連絡が来た。

この学生は15日午前に指定された世界史については断ったが、15日午後1時に問題を送ると指定された古文・漢文と英語、16日に指定された数学と化学については要請に応じることにした。指定された時間帯はいずれも大学入学共通テストの試験時間帯と重なっていたが、学生はカンニングなどの可能性は想像もせず、テストの内容は予備校の過去の模擬テストか何かだろうと考えていた。

しかし当日の直前になり、当該人物から「キャンセルする」と連絡があり、その後音信不通になったして、実際に問題は解いていないという。この学生は不審に思って、運営会社に情報提供したという。

さらに別の男子学生のところにも世界史と現代文で同様の打診があったが、「日程の都合が合わなかった」として応じなかったとしている。

事実関係の解明が待たれる


現時点では第一報の段階であり、事実関係については今後の詳細な調査が待たれるものではある。少なくとも、試験時間中に問題が漏洩した疑いがあり、さらにはカンニングなどの不正につながるとも疑われるということにもなる。

なお、インターネット経由での試験問題の試験時間中の流出と、入試問題だと気づかないまま外部の人が解答した案件は、2011年度のセンター試験でも起きている。その事件を思い出した。

受験生のカンニング案件なのか、もっとほかの意図があるのかは現時点では不明だが、いずれにしてもこういうことが起きるのは好ましくないことであり、事実関係の解明が待たれる。
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