毎日新聞2022年5月15日付(ウェブ版)に『いじめで自殺した娘 学校側「責任ない」 遺族、後悔と憤りの5年』が掲載されている。

福岡県北九州市の私立高校に通っていた当時2年の女子生徒が2017年4月、いじめ加害に関与したとされる複数の同級生の実名を名指しして「私に何かあったら(同級生の名前)のせい」とするLINEを送った後に自殺した事件があった。

http://kyouiku.starfree.jp/d/post-10783/

この事件について、事件の経過やその後の学校側の対応について触れている。

この事件では、自殺した生徒が同級生からわざと無視される・嘘を伝えられるなど仲間はずれにされるなどのいじめがあったことが指摘された。直接の暴力などは確認できなかったというが、専門家によるとこのような形で周囲の大人にわかりにくい形で進行するいじめは「現代型いじめ」「いじめの透明化」などと位置づけられているという。

学校側はいじめを否定し、生徒の家族に事前連絡をしないまま保護者説明会を開催しようとしたという。生徒の同級生は、家族に対して「生徒はいじめられていた」「保護者説明会をする予定」という情報提供をおこない、父親が保護者説明会に急きょ参加したという。学校側は「いじめはなかった」という説明に終始した。父親が「娘は同級生から仲間はずれにされていた」と訴え、参加していた別の保護者も「それはいじめでは」と疑問の声を上げたことから、学校側は調査に踏み込むことにした。

しかし学校は「いじめはあったが、自殺との因果関係は不明」とした第三者委員会の調査結果が出たことを理由に「法的義務は果たした」などとしたという。

第三者委員会の調査結果をもとに、「日本スポーツ振興センター」が学校災害共済での死亡見舞金を支給しなかった。このことで生徒の家族はセンターを相手取り訴訟を起こし、「いじめが原因の自殺」と認めて死亡見舞金を支給するよう命じる判決が確定した。

しかし学校側は「学校との訴訟ではないので、学校としては判決内容に全く関与していない」「生徒間のいじめなので、今後の生徒指導には反映させるが、家族側に追加で対応を説明するなどの予定はない」という対応を取ったとされる。

記事で紹介されている内容は、概略でそのような経過になっている。

当該案件については、報道で指摘されている範囲のみの情報で考えても、いじめであることは明らかではないかと考えられる。仲間はずれなどのわかりにくいもの、専門家によると「いじめの透明化」と定義づけられる形態のものだとしても、いじめの訴えがありまた周囲からも指摘されていたという事実を重く受け止めなければならないと感じる。

自殺事案発生後の学校側の対応も、どこか「他人事」かのように感じるのは、腑に落ちないという印象を受ける。学校としてこのような対応でいいのだろうかという疑問を感じる。
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