「生まれつき茶色がかっていた髪にもかかわらず、学校から黒く染めるよう強要され、不登校に追い込まれた」などとして、大阪府立懐風館高校(羽曳野市)に在学していた女子生徒が大阪府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は2022年6月15日付で、生徒側の上告を棄却した。
校則は学校側の裁量だとして黒染め強要の違法性を認めなかった、一審・二審判決が確定する。
生徒は生まれつき茶色っぽい髪の色だったにもかかわらず、高校入学後に学校側から髪の毛の色を黒く染めるよう繰り返し強要された。生徒は、染髪料が体質に合わずに頭皮に健康被害を生じるなどのこともあったという。
2年だった2016年9月には、髪の色を理由に授業や学校行事への参加を禁じられるなどした。生徒はそのまま登校できない状態になった。生徒は2017年度に3年に進級したが、所属すると事前に聞かされていたクラスでは生徒の名前は名簿から抹消され、席もなく、再び登校できない状態になった。
生徒側はこれらの措置を不当だとして提訴した。2017年10月に提訴が報道され、大きな社会問題となった。
この提訴報道をきっかけに、校則の問題が国会や大阪府議会、また各地の地方議会で取り上げられるなどもして、生徒の人権を過剰に制限するような校則、いわゆる「ブラック校則」の見直しの動きも生まれた。
訴訟では、大阪府は3年進級後の学校側の対応については不備があったと認めたものの、校則での対応は正当だとして争う姿勢を示した。
2021年2月16日の一審大阪地裁判決では、大阪府側の主張にほぼ沿うような形で、大阪府が自ら認めた部分のみを認定し、生徒が不登校になった後の対応については不備だとしてその部分については賠償を命じたものの、校則や頭髪指導での対応については問題はなかったとして請求を棄却した。生徒側は控訴したが、大阪高裁は2021年10月28日、一審判決を支持して控訴を棄却した。
この訴訟では、頭髪指導・校則の違法性という最も重要な部分であるが認められなかったというのは、極めて残念だと感じる。
一審判決によると、生徒の髪の毛の色についても「教師が頭髪指導の際、根元が黒かったことを確認した。元々茶色ではなかった」とする教師の言い分をなぞる形で、指導は学校側の裁量の範囲内で当然という極めて表面的・表層的な内容を導いている。しかしこの判断については、前提から疑問を感じる。髪の色に対してあれこれ難癖付ける行為それ自体がおかしいし、髪の毛が茶色いから指導は当然というのもおかしく感じる。
訴訟としての結論は敗訴となったのは残念ではある。しかしその一方で、当該事案の提訴報道をきっかけに、校則の問題について批判や見直しの動きが全国的に出てきたことについては、訴訟結果に関わりなく学校に影響を与えることになっている。
ブラック校則見直しなどの形で、実質的に実をとれるような動きにつながっていくことが期待される。
校則は学校側の裁量だとして黒染め強要の違法性を認めなかった、一審・二審判決が確定する。
事件の経過
生徒は生まれつき茶色っぽい髪の色だったにもかかわらず、高校入学後に学校側から髪の毛の色を黒く染めるよう繰り返し強要された。生徒は、染髪料が体質に合わずに頭皮に健康被害を生じるなどのこともあったという。
2年だった2016年9月には、髪の色を理由に授業や学校行事への参加を禁じられるなどした。生徒はそのまま登校できない状態になった。生徒は2017年度に3年に進級したが、所属すると事前に聞かされていたクラスでは生徒の名前は名簿から抹消され、席もなく、再び登校できない状態になった。
生徒側はこれらの措置を不当だとして提訴した。2017年10月に提訴が報道され、大きな社会問題となった。
この提訴報道をきっかけに、校則の問題が国会や大阪府議会、また各地の地方議会で取り上げられるなどもして、生徒の人権を過剰に制限するような校則、いわゆる「ブラック校則」の見直しの動きも生まれた。
訴訟では、大阪府は3年進級後の学校側の対応については不備があったと認めたものの、校則での対応は正当だとして争う姿勢を示した。
2021年2月16日の一審大阪地裁判決では、大阪府側の主張にほぼ沿うような形で、大阪府が自ら認めた部分のみを認定し、生徒が不登校になった後の対応については不備だとしてその部分については賠償を命じたものの、校則や頭髪指導での対応については問題はなかったとして請求を棄却した。生徒側は控訴したが、大阪高裁は2021年10月28日、一審判決を支持して控訴を棄却した。
判決は残念
この訴訟では、頭髪指導・校則の違法性という最も重要な部分であるが認められなかったというのは、極めて残念だと感じる。
一審判決によると、生徒の髪の毛の色についても「教師が頭髪指導の際、根元が黒かったことを確認した。元々茶色ではなかった」とする教師の言い分をなぞる形で、指導は学校側の裁量の範囲内で当然という極めて表面的・表層的な内容を導いている。しかしこの判断については、前提から疑問を感じる。髪の色に対してあれこれ難癖付ける行為それ自体がおかしいし、髪の毛が茶色いから指導は当然というのもおかしく感じる。
訴訟としての結論は敗訴となったのは残念ではある。しかしその一方で、当該事案の提訴報道をきっかけに、校則の問題について批判や見直しの動きが全国的に出てきたことについては、訴訟結果に関わりなく学校に影響を与えることになっている。
ブラック校則見直しなどの形で、実質的に実をとれるような動きにつながっていくことが期待される。