鹿児島県出水市立中学校に通っていた当時2年の女子生徒が2011年9月に自殺し、背景に学校でのいじめがあったと指摘された事案があった。

http://kyouiku.starfree.jp/d/post-6815/

この案件に関して、学校事故・学校災害に遭った児童生徒への災害共済給付金の手続き事務をおこなっている独立行政法人日本スポーツ振興センターが、生徒への死亡見舞金を不支給とした判断を変更し、2022年8月までに「学校管理下の事故での死亡」と認定して遺族側に見舞金を支払うことがわかった。

決定は2022年7月におこなわれ、その後遺族側に通知された。遺族側は2022年8月8日、鹿児島県庁で記者会見し、事実関係を公表した。

事件の経過


当該女子生徒は2011年9月1日未明に自宅からいなくなり、同日午前中に遺体で発見された。自宅近くの陸橋の柵をよじ登って九州新幹線の線路に飛び込み、現場を通過した列車にはねられたとみられている。当日は2学期の始業式だった。

遺族側の独自調査で、この生徒が「所属していた部活動での嫌がらせ」「持ち物を壊される」などのいじめを受けていたとする、同級生からの証言が複数得られた。一方で学校・教育委員会側は、遺族が指摘した内容については「学校側の調査でも、そういう事象があったことは認められる」とほのめかした一方で、いじめはなかったという見解に終始し、学校側が調査したいじめアンケートの内容開示も拒否した。

遺族はいじめアンケートの開示を求める訴訟を起こし、その後開示が認められた。開示されたアンケートでは、遺族側の独自調査で得られた情報と同様に、いじめをうかがわせる内容が複数記載されていたという。

遺族側がいじめの再調査を要望したが、出水市は拒否したことで、遺族側は「生徒の自殺はいじめが原因」だとして改めて訴訟を起こした。

いじめ訴訟では2021年、出水市の対応が不適切だったと認めて和解金を支払うなどの内容で和解が成立した。当時の報道によると、生徒が受けた行為10項目については和解案の中で言及された一方で、その行為がいじめかどうかということについては、明確な表現での言及を避けているとされる。一方で、学校側はいじめを想定して対応すべきだったと指摘されたことなど、生徒が受けた行為についていじめだったと解釈できるような表現もあったともされる。遺族側は和解内容について「実質的にいじめが認められたと評価している」とした一方で、出水市は「いじめではない」という態度を変えていない。

日本スポーツ振興センターの見舞金については、センター側は2013年、「学校管理下の事故ではない」とした出水市の主張なども背景に、学校での教育活動に起因する死亡と明確に判断が付かないとして、不支給の決定をおこなっていた。遺族側は、市との訴訟の和解を受け、センター側に再審査を申し立てた。

センターは、和解内容に関する資料などを精査した結果、生徒が受けた行為と自殺の時期が近接していることなどから、生徒の自殺は学校の教育活動に起因する事故であると認められる、センター側の給付金支給基準となる「いじめ・体罰等」の項目に該当すると認定した。

出水市が「いじめはなかった」とする対応を続けていることは非常に残念ではある。一方で日本スポーツ振興センターが資料を精査したことで、市の主張を事実上否定し、生徒の死亡は学校管理下の事故だったと認定したということになる。これはすなわち、実質的には生徒が受けた行為はいじめだと認定したということにもなる。死亡見舞金という金銭の問題以上に、事実関係が適切に認定されて判断されたということのほうが重要だと考えられる。
このエントリーをはてなブックマークに追加 編集