大阪府教育委員会は2022年8月29日の教育委員会会議で、定員割れが続いている府立高校3校を2024年度入学生より募集停止し、それぞれ近隣校に機能統合する形で、最終学年の在校生(2023年度入学者)が卒業する2026年3月に閉校とする案を打ち出した。

細部の調整を経て、2022年11月にも大阪府教育委員会としての正式方針として決定する見通しとなっている。府教委の方針決定後、大阪府議会に関連条例改正案を提出し、可決された場合は募集停止・閉校となる。

対象校は、平野・かわち野・美原の3校


対象とされた学校は、大阪府立平野高校(大阪市平野区)、大阪府立かわち野高校(東大阪市)、大阪府立美原高校(堺市美原区)の3校。いずれも、4年連続で定員割れしているとして、大阪府条例による「3年連続定員割れの高校は再編対象」とする基準に達していた。

平野高校は松原高校(松原市)に、かわち野高校は枚岡樟風高校(東大阪市)に、美原高校は大塚高校(松原市)に、それぞれ機能統合する構想となっている。

機械的な統廃合はおかしい


大阪府では維新の府政になってから、府立高校の統廃合方針がより強力な形で進められている。「教育基本条例」として悪名高い条例(施行時には複数の条例に分割した上で施行)を作り、その中で府立高校については、「3年連続定員割れの高校は再編対象」だとか、学校間競争を促すなどの方向性が強まっている。

また高校入試での学区制の廃止、「チャレンジテスト」、私学無償化(実際は無償になる範囲の制限が強い)とした私学への誘導施策などの複数の要素も加わり、公立高校をめぐる状況は悪化させられている。

また2000年代後半の不況の際、家庭の経済状況の悪化を背景に、また当時の橋下徹大阪府知事がおこなった私学助成削減の影響で私立高校授業料が値上げされたことも加わり、大阪府では公立高校を志願する生徒が想定以上に増え、二次募集や定時制募集などを経ても行き場がなくなった生徒が生まれたという苦い経験があった。

大阪府ではこのときの教訓から、定員に余裕を持たせた募集をおこなっているという背景もある。「定員割れ」は大阪府全体で構造的に生じることになる。また学校間競争などもあって、生徒が集まりにくい条件にある周辺部の学校では、定員割れが生じやすい状況となっている。

しかし条例を根拠に、機械的に統廃合がされることで、地域から公立高校がなくなり、遠方に通学することになる事例も増えている。

必要な場合に統廃合の選択肢をとるということは、個別の事例とは切り離した一般的な観点では、ありうるのかもしれない。しかし大阪府での府立高校統廃合については、学校教育への影響、地域への影響などを慎重に検討した形跡もなく、また関係者からの慎重な検討の結果そういう方向でまとまる合意が得られたわけでもなく、維新がごり押しして作られた条例によって行政が上から機械的な基準を決め、それに該当したから統廃合対象にするという、乱暴な措置となっている。

大阪府立高校での統廃合は極めてまずいことになっていて、反対すべきものだと判断する。
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