安倍晋三元首相の国葬に際して、国葬当日に県立学校に対して半旗掲揚を求めた山口県教育委員会は2022年10月6日、半旗掲揚に反対する市民団体からの要請の場で、「半旗掲揚の通知は職務命令。正当な理由がなく半旗を掲揚しなかった場合は処分対象となる」という認識を示した。

一方で半旗掲揚の状況については調査をおこなっていないとして、実際に処分に踏み切る可能性は低いとみられている。

山口県を地盤としていた政治家でもある安倍元首相の死去に際して、山口県教育委員会は2022年7月の家族葬、および2022年9月27日の国葬の際に、いずれも県立学校に半旗掲揚を求めるなどしてきた。このことについては、弔意の強制につながり内心の自由にかかわるなどと、強い批判を浴びている。

山口県ではさらに、2022年10月15日に、県・県議会などが参加した葬儀委員会形式での、安倍元首相の県民葬が下関市内で予定されている。県民葬での半旗掲揚要請については、当日が土曜日・休日でもあり、現時点では要請などは出していない、扱いは未定だとしている。

半旗掲揚の要請については、明らかに問題だと考えられる。

一人の人間があのような形で命を失われたこと、またその背後とされる理由については、客観的な視点から解明を図っていく案件ではあろう。しかし、弔意という全く別次元の、内心にかかわるものを持ち出し、公的な場で一方的に従うよう求められると、内心の自由にも関わるものとなる。行政が特定の政治家、しかも政治的施策では賛否両論ある政治家について特定の方向性を打ち出すことで、その政治家が主導した施策の検証などを妨げることにもつながり、その政治家の評価についてもまとめて特定の方向に誘導することにもつながりかねない。

さらに、実際の手続き上では「調査していないから実際に処分する可能性は低い」とされていても、「職務命令」「半旗を掲揚しなかった場合は処分対象になる」とする見解を示したのは、半旗掲揚が強制となっているということにもなり、内心の侵害にもあたる。

山口県教委が「処分対象」などとする見解を示したのは、極めてまずいことだと感じる。
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