石川県教職員組合の調査によると、県内の多くの小中学校で、全国学力テスト対策として、通常の授業時間を削って過去問演習に充てるなどの「事前対策」の状況が横行していることが判明した。

石川県では、全国学力テストの平均点は全国1位や2位を記録するなどの状況が続いているという。

NHKニュース(ウェブ版)2022年10月14日配信記事が報じている。

経過


石川県教職員組合は、2022年度全国学力テストについて、学校側の対応を調査するために県内の約280校の小中学校の教員を対象にアンケートをとり、約104校から回答があった。

回答があったうち72校で、「授業時間や放課後などに事前対策をするよう、校長などから求められた」とする回答があった。通常の授業を潰して、過去問演習に充てるなどの状況を強いられたなどとしている。

「事前対策をしないと教育委員会の訪問が増える」「(全国学力テスト対策をしていることについて)学年便りに記載しないように言われた」とする回答もあった。

またNHKニュースでは、NHKの独自取材として、県内の小学校教員から寄せられた情報も紹介している。情報提供者が勤務する学校では、試験1年前の小学校5年の頃から、授業中や放課後などに、全国学力テストの類題や過去問などの「対策問題」を解かせる行為が横行しているとされる。

NHKに情報を寄せた教員は、以下のように話したという。
「体験的な活動を増やして社会や理科をもっと好きになってもらいたくても、学力テスト対策に追われて優先順位が低くなってしまう。子どもたちの大切な時間を使ってまで、塾や予備校のように対策をするのは、教育の機会が均等に行き渡っているか調べるという、学力テストの本来の目的からもかい離していると思います」

NHKニュース2022年10月14日配信「全国学力テスト 行き過ぎた事前対策 トップクラス石川県で何が」

その一方で、NHKが石川県内の19市町教育委員会におこなった取材によると、いずれも「事前対策などは把握していない」とした。

事前対策は大問題


全国学力テストについては、学校間の競争や序列化につながるなどとする批判が出て、表向きは「学力状況の把握」という扱いで導入された。しかし実際には、個別の児童・生徒の学力状況の把握としても不十分、全体的な傾向把握としても不十分で、テストの点数競争につながってしまっている状況になっている。悉皆調査であり、また都道府県別や、自治体独自判断で市区町村別・学校別平均点を公表することで、平均点が一人歩きするような形にもなっている。

そもそも学力状況のありのままの把握というのなら、事前対策などは本来ありえないということになる。しかし事前対策などをして学校やその地域の平均点を上げることが目的化するような状況は、過去にもあちこちの地域で発覚して問題になってきた。

しかも表向きはテスト対策をおこなっていることを隠しながら、実際はテスト対策が横行しているとうかがわれる状況になっているという石川県の状態は、余計にたちが悪いものだと感じる。
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