名古屋市立中学校1年だった女子生徒が2018年1月、所属していた部活動でのいじめを苦にして自殺した事件で、「学校がいじめに対して適切に対応しなかった」として両親が名古屋市を相手取って約1500万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が、2022年11月15日に名古屋地裁で開かれた。

名古屋市は「いじめの予見は困難」「安全配慮義務違反も認められない」として請求棄却を求め、争う方針を示した。

経過


生徒は2017年2学期、大阪府内からこの中学校に転入し、ソフトテニス部に入部した。転校前の学校ではバドミントン部に所属し、ソフトテニスは初経験だったことから、入部当初は個別練習となったが、練習相手を頼んでも無視されるなどのいじめが続いた。また生徒が急速に実力を付けたことでも、嫉妬の対象となっていじめが激化したとも指摘された。

部活動ではいわゆる「ブラック部活動」と指摘される傾向があり、「病気やケガ、テスト勉強などでも、欠席は一切許されない」「上下関係に関すること」などの暗黙の決まりがあったり、人間関係がよくないなどの状況があったともされる。部内でのいじめや人間関係を苦にして退部する生徒が相次いでいたとも指摘されている。

生徒は2018年1月5日、ソフトテニス部の合宿に行くとして家を出たまま、集合場所に現れず、自宅近くのマンションから飛び降りて死亡した。

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事件発生後、同級生からはいじめの訴えがあったものの、名古屋市教育委員会は「いじめは認められなかった」と結論づけた。家族が再調査を求め、市長部局での再調査委員会では2021年7月、部活動で無視されたことなどをいじめと認定した上で、自殺との因果関係については「部活動でのできごとのみが直接の原因とは断定できないが、部活動でのストレス・転校による環境の変化など含めた複数の要素が重なった」とする調査報告書を公表した。

第1回口頭弁論では、名古屋市は「いじめの予見は不可能、ないしは著しく困難」と主張した。一方で生徒の父親は「娘に対する無視はいじめだと認定された。私たちの訴えに無視を続ける教育委員会も、いじめをおこなっているのと同じではないか」と訴えたという。

指摘されている部活動の状況からは、いじめ、あるいはいじめにつながる兆候を認知することは、不可能ないしは著しく困難とまでは言えないだろう。いじめをなかったことにしようとする、またいじめ被害の訴えを無視で応じることも、「いじめ」に類する行為であるといってもよい。いじめを否定して争うことは、適切だとは思えない。
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