大阪市では、維新市政になってから、当時の橋下徹大阪市長の肝いり施策として、2012年に市立小中学校の学校選択制の導入構想が打ち出され、2014年度より順次導入された。

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大阪市教育委員会は、学校選択制の構想から10年、実際に導入されてからでも8年になることで、学校選択制の効果を検証する調査をおこなっている。このたび、調査の中間集計の内容が明らかになったとして、2022年11月に複数のマスコミで調査内容の一部が報道されている。

学校選択制を利用して、本来校区に指定された就学校とは別の、区域外の小中学校に就学する児童・生徒は、小学校で10.9%、中学校で7.5%になっているとされる。保護者に対して学校選択制の印象について尋ねたところ、保護者全体では7割、学校選択制を利用した児童・生徒の保護者では9割が、「よい制度だと思う」と回答している。

一方で、地域の風評によって学校が選ばれがちになることなども指摘されている。保護者の自由記述では、「〇〇学校は荒れている」「〇〇学校は学力レベルが低い」といった風評で左右されるといった、具体的な内容をあげての回答もあったとされる。

また学校側への調査では、学校選択制によって教育的課題が生じているという回答が4割にものぼっている。児童生徒が増加した学校では、本来の校区外からの通学者も増えていることでの家庭訪問の範囲拡大・登下校の安全確保などでの教職員の負担増や、教室数の不足などが課題としてあげられている。一方で減少した学校では、学級周が減ったことに伴う教職員数の減少などがあげられた。

学校選択制を利用して受け入れられる児童・生徒数については、1学級分の人数を上限にするという目安が示されているが、それでも児童・生徒数の急激な変化による教育活動への影響は避けられない状態になっているということになる。

また人気校・不人気校の固定化の傾向も課題になる。学校選択制での各学校別の選択状況は、大阪市教育委員会および各区役所のウェブサイトで発表されている。それらの資料を年系列でながめる限り、学校選択制を利用して区域外就学を希望する児童・生徒が多くいる学校と、そうでない学校は、ほぼ固定化しているようにも見受けられる。

「隣の学校の方が近い、大通りなどを渡らずに通学できる」などの事情での選択もありうるのだろうが(それは本来、学校選択制に頼らずとも対応可能)、地域の噂・風評などでの選択もありうるのではないかと思われる。大阪市では学校選択制の導入目的自体が、学校間競争の活性化名目だった。また大阪市では、全国学力テストや市独自の学力テストの学校別平均点を、学校選択制の資料として配付する学校紹介冊子に掲載するなどしていることも、影響があるとも思われる。

調査は現時点では中間まとめで、報道された内容も断片的ではある。とはいえども、学校選択制が必ずしも「よいもの」ではない、むしろデメリットが目立つという方向性が浮き彫りになっているようにも見える。当時の橋下徹大阪市長・および市政与党大阪維新の会の「負の遺産」ともなっている。

やはり学校選択制については、廃止を軸に、少なくとも大幅縮小を図っていくべきだとも感じる。
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