2022年11月に東京都内の中学校3年の生徒を対象に実施した英語スピーキングテスト「ESAT-J(English Speaking Achievement Test for Junior High School Students)」について、当日試験監督を務めた男性が2022年12月9日に記者会見を開き、試験運営の実態を告発した。

スピーキングテストに関連して、受験した生徒や保護者のものとみられるSNSや、保護者団体のアンケート調査などでは、「隣の教室の声が聞こえた」という声が寄せられている。試験は同じ会場で前半組と後半組に分けて実施し、受験しない側は待機時間としていたことで、前半組の試験の様子が後半組の教室に聞こえ、問題が推測される状態になって、後半組が有利になるのではないかという指摘がされていた。このことは保護者団体のアンケート調査結果が公表され、複数のマスコミで報道されたり、都議会の代表質問でもとりあげられている。

一方で東京都教育委員会は、マスコミ取材への対応や都議会質問への答弁で、「隣の教室に声が聞こえたなどという報告は受けていない」などとする見解に終始している。

当日試験監督だった男性は、「自分が試験監督をしていた教室でも、確かに隣の教室の声が聞こえていた。きちんと聴き取れるレベルで聞こえていた」と、スピーキングテストの解答内容がはっきり聴き取れる状況での聞こえ方だったと証言した。さらに、受験生から聞いた話として「前半組の生徒の声が教室に聞こえたことで、その教室を担当していた試験監督が、後半組の生徒に『いい点とれそうですね』と声をかけていたと聞いた」とも証言した。

「隣の教室の声が聞こえたなどという報告を受けていない」とする東京都教委の見解についても、「そのような声を集約する仕組みを元々作っていないのでは。少なくとも自分のところには聴き取りなどの措置はなかった」などと批判している。

このほかにも、試験監督だった男性は「ほかの教室担当の試験監督が、受験生の名簿を机の上に置き忘れていたのを見た」など、ほかにもずさんな運営があったとも指摘した。

スピーキングテストについては、試験の構想段階からグダグダになっている上に、当日の運営でも重大な問題点が次々と指摘されているということになる。

こんなもの、ただでさえ「採点基準が不明朗にならざるをえないもの」だと指摘されているのに、当日の試験運営でこんなことが起これば、余計にまともに採点できないのではないのか。しかもスピーキングテストの成績を、都立高校入試では当日の筆記試験の点数・調査書の点数(いわゆる内申点)と共に合否判定の基準にするというめちゃくちゃさ。受験生や関係者にとってはたまったものではないだろう。
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