広島市教育委員会が作成している平和学習の教材「ひろしま平和ノート」の改訂で、第五福竜丸事故に関する記述が削除される方向で調整されていることが、2023年3月1日にわかった。

第五福竜丸事故は1954年3月1日、静岡県焼津市のマグロ漁船・「第五福竜丸」が、太平洋沖のマーシャル諸島ビキニ環礁で水爆実験に巻き込まれ、乗務員23人が被曝したという事故。第五福竜丸事故は中学校3年向けの教材に掲載され、当該単元では核兵器をめぐる世界の現状を学習させる目的になっているという。折しも、この事故が発生した3月1日に、教材からの削除の方向性が明らかになったということになる。

報道によると、教材の削除・差し替えの理由として、「第五福竜丸が被曝した記述のみにとどまり、被爆の実相を確実に継承する学習内容となっていない」との指摘が出たという。教員用の指導教材には記述を残し、生徒には概要や参考文献を紹介する形にするとされる。

広島市の平和教育副教材では、「はだしのゲン」が削除される方向性となっていたことが明らかとなり、報道に触れた市民からは疑問の声が上がったという事案があったばかり。それに続く教材変更の扱いとなる。

第五福竜丸事故について、教材改訂の議論がどのような形で進められているのかは、現時点での報道の内容では詳細ははっきりしない部分もある。懸念がもたれるような方向性で進められたのではないかという不安も拭いきれない。より詳細な議論内容が明らかになっていくことが望まれる。
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