東京都内の私立中学校1年だった男子生徒が2017年12月に自殺し、背後に教職員からの不適切指導があったと指摘されていたことがわかった。生徒の父親が2023年5月29日に記者会見し、経過を公表した。

事件の経過


事件の経過は、以前に週刊誌でも報じられたことがあったが、以下のようになっているようである。










2017年12月、この生徒が所属する水泳部で、顧問教員が部員に対して「自分に年賀状を送る生徒がいるかもしれない」として、自分の自宅住所を教えた。当該生徒にとっては顧問教員は、クラスの教科の授業担当でもあり、水泳部員以外のクラスの生徒も年賀状を出せるようにと、クラスのLINEにも顧問教員の住所を伝えた。しかし顧問教員はそのことを「悪意での行為」と受け取って激怒し、当該生徒に「指導」したという。

さらにその翌日、学校近くの店舗で盗難騒ぎがあり、連絡を受けた学校側は、前述の水泳部顧問を含む数人で、この生徒が関与しているという予断を持って問いただした事案も生じた。生徒は関与を否定したが、教員らは「学校帰りに寄り道したことが問題だ」などと扱った。

生徒はその後、学校最寄りの鉄道駅で電車に飛び込んで死亡した。

学校側は事件発生直後、指導と死亡との因果関係を否定した。しかし第三者委員会では3022年1月、学校側の威圧的な指導と生徒の死亡には因果関係があると判断する調査報告書を出した。報告書については、保護者側は一般への公表を要望したものの、学校側は応じなかったという。

父親は、同級生が中高一貫校の高校を卒業したことをきっかけとして、事案を公表したという。

雑感


生徒に対して威圧的な行為など不適切な指導をおこなった結果、生徒を自殺に追い込むなどする、「指導死」といわれる事案については、近年問題になっている。肉体的暴力や有形力の行使など、狭義での「体罰」を苦にしての自殺も含まれるものの、それにとどまらず、精神的に追い込む行為で生徒が死亡するというものも含めた、生徒の自殺・死亡事案となっている。

新聞報道を読むだけでも、「指導死」に該当するのではないかと思われるような事案が、数ヶ月に1度程度は報道されている。もちろんすべての事案がマスコミ報道されるわけではないので、水面下ではそのようなケースももっとあるのかもしれない。

「指導死」については、被害者をはじめとした関係者のプライバシーに関することに配慮する必要があることは、言うまでもない。その前提の上で、プライバシーに差し障りのない範囲で、事件の経過そのものについてはできるだけ詳細に明らかにした上で、教訓にして共有していくことが、同種事件の再発防止策にもつながると考えられる。

当該案件についても学校側は事案を公表し、教訓を明らかにして、再発防止策につなげていくことが必要ではないかと考える。
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