堺市では、中学校区単位で「学校群」を設定し、中学校と校区内の小学校をグループ化して、グループとなった「学校群」ごとに小中連携教育をおこなう構想を提唱している。

維新市政の「肝いり事業」として提唱され、2023年度以降に一部でモデル実施をおこない、将来的には全市に広げたいとしている。

この構想は、2023年6月4日投開票の堺市長選挙でも、争点のひとつとして急浮上していると指摘された。

堺市「学校群」構想の問題点


堺市での学校群制度では、構想のひとつとして「キャンパス方式」があげられた。現行の校区を維持して、児童・生徒の学籍は通学区域内に指定されている学校のままとしながらも、学校群グループに属する各学校を「キャンパス・分校」に準じるものに見立てて、学校ごとに開講する教科を設定する。教科ごとに「A校では○○教科の授業を開講する」「B校では△△教科の授業を開講する」といった形で、児童・生徒は日によって登校場所が変わる形で、各教科の授業を集中して受ける形が構想されているという。

市側から提唱されたメリットとして、各教科の専門的な指導が受けられる形になるという点があげられた。また特別教室を使用する教科(音楽、理科、図工・美術、家庭科など)の特別教室や、体育設備などを、その教科の授業が開講される学校1校に集約することで、市全体として維持管理費や施設老朽化の際の改築費用などを縮小できることなども指摘されている。

これについて、堺市長選挙で再選を目指す現職陣営は同制度の提唱に携わった一方で、「非維新」系の新人候補は見直しを求めているとしている。

児童・生徒の負担を考えないもの


一般的な観点でいえば、対応する校区での小中学校の連携それ自体は、それぞれの課題によってはありうるものだろう。

しかし堺市で提唱されている学校群制度は、現状を全く踏まえていない、突拍子な話であるとも感じる。校舎や学校整備の予算という話だけで、児童・生徒の学び・日常生活とその影響というもっとも重要なものを置き去りにしようとしているのではないかと感じる。

教科の専門的な指導などはもちろん歓迎ではある。とはいえども、日によって登校先が変わることで、通学・移動の時間が長くなることとそれに伴う安全面の問題、また児童・生徒が落ち着かない状況にもなりかねないことなど、児童・生徒の負担が大きく、教科指導を上回るデメリットがあるという気がしてならない。

重大な懸念が示されるような内容を強行することは、禍根が生じることになる。
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