会計検査院は11月22日、大阪府豊中市の国有地を学校法人森友学園に相場より約8億円値引きされて売却した問題について、「値引き額の算定方法には十分な根拠が確認できない」などとする検査結果を国会に提出した。

 その一方で適正と考えられる価格については、国側が資料を破棄したとされることに伴い、「検証が十分におこなえない」とした。

 報告では、「敷地内からゴミが出てきた」として国が値引き額を算出した算定方法について、「十分な根拠を確認できない」とした。国土交通省のデータを元に別の2つの方法で算定をおこなったところ、ゴミの撤去費用は国が算出した額よりもいずれも相当数少なくなるという計算になった。

 また、国土交通省や財務省が資料を残していなかったことについても、批判を加えている。

 算定に際しての政治家からの働きかけの有無については、会計検査院の担当範囲から外れるとして、触れられていない。

 会計検査院の検査には限界があるものの、少なくとも国の土地売却にかかる一連の経緯については適切ではないと判断したことが読み取れることになる。

 森友学園の問題は、国と学園側との土地取引の不透明さが発覚したことが発端になっている。

 その一方で、不透明な土地取引については、学園側が設置を計画していた私立小学校「瑞穂の國記念小學院」について、大阪府が強引な認可手続きを進めていたことと一体になっていたことが指摘された。背景には橋下徹・松井一郎の2代の大阪府知事や、大阪維新の会の政治家の存在も見え隠れしている。

 また「瑞穂の國記念小學院」については、安倍晋三首相の妻・安倍昭恵氏が名誉校長になるなどしていた。

 2012年2月には大阪市内で「日本教育再生機構」主催のシンポジウムが開かれた際、当時1期目の首相を退任して一衆議院議員になっていた安倍晋三氏と松井一郎大阪府知事がパネリストとして並び、また司会は遠藤敬衆議院議員(維新)がつとめ、極右反動的な教育推進で意気投合したという事実も明らかになっている。

 森友学園は教育勅語暗唱などをおこなう幼稚園として、2006年7月に新聞報道されたことがある。

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 森友学園理事長だった籠池泰典氏は、2006年末の第一次安倍政権下での教育基本法「改正」を受けて極右的な教育姿勢を強め、系列小学校設置を具体化しようと動き始めたとされている。維新や安倍首相に近い教育思想を持つ勢力にとっては、籠池氏の存在が好都合だったということにもなる。

 一幼稚園経営者の立場や独断的な行動で、国の土地取引を左右できるとは考えにくい。一連の問題では、大阪府で維新の果たした役割と、国政レベルで政治家が果たした役割を、それぞれ解明していく必要がある。
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