産経新聞ウェブ版2016年3月19日付が、国立・私立中学校少なくとも約30校で「学び舎」歴史教科書が採択されたことについて、否定的に描く記事を出している。

 「学び舎」教科書は現場の教員らの声を取り入れて編集したのが特徴で、2014年に検定合格し2016年度から使用される版が初進出となっている。2015年夏の中学校教科書採択では、公立中学校では採択がなかったものの、有名校といわれるような国立中学校や私立中学校での採択がみられた。

 「学び舎」教科書の内容は、史実をきちんと踏まえた内容を、しっかりとした内容で書き込んだ作りとなっている。中学生に渡したいような内容となっている。

 一方で一般の公立中学校では授業時数の関係から、他社以上に詳細に書き込まれて分量もある記述が逆にデメリットとなって、授業時間内に内容が終わらないとか生徒が消化不良を起こしてしまうかもしれない、結果的に難易度が高くなっているという、中身とは全く異なる観点からの危惧も考えられる。中身が悪いからというわけではなく、むしろ中身が良すぎるゆえに逆に別の要因によっておかしなことになってしまうというジレンマである。

 この教科書はいわゆる難関校向けとしての編集を意図した教科書ではないとはいえども、そういうジレンマをある程度乗り越えられると判断した学校だと、採択に踏み切りやすいのかもしれない。

 一方で極右派にとっては「学び舎」の内容がいわゆる「左翼」的で気に入らないとされ、産経新聞がたびたび非難する記事を出したり、育鵬社勢力も名指しで目の敵にしている。今回の記事での非難も「従軍慰安婦」問題や河野談話を唯一とりあげたという角度がメインとなっている。

 高校教科書検定が出たタイミングでこのような記事を出すことについて、教科書検定が右傾化していると指摘されたもと、まだまだ足りないと主張したいのではないかという印象を受ける。

(参考)
◎灘、筑駒、麻布など有名校がなぜ? 唯一慰安婦記述の中学歴史教科書「学び舎」、30校超で採択(産経新聞 2016/3/19)
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