教育勅語を学校現場で活用することを否定しないと受け取れるような政府見解が問題となり、国会でも取り上げられている。

 教育勅語については、教育勅語に基づく日本人の思想形成が戦争につながったという反省から終戦後に奉読などを禁止する文部省通知が出され、日本国憲法と教育基本法の施行で失効し、また国会で排除・失効確認決議も出されたことから、本来は議論の余地のないものではないかといえる。

 徳目にいいことを書いてあるなどとして持ち込むことを否定しなかったり、歴史教育の資料としても否定するのかなど誰も問題視していないような揚げ足取りレベルのことを言ってごまかそうとするなど、政府の見解には無理があると感じる。

 教育勅語がクローズアップされたきっかけのひとつは、森友学園問題でもある。大阪府の学校法人森友学園が運営する塚本幼稚園では、教育勅語の暗唱などを取り入れる教育がおこなわれていたことも指摘されている。

 森友学園問題では大阪府は、小学校設置構想に関して大阪府側が異例の便宜を図っていたことも指摘されている。また森友学園の理事長夫妻が選挙で維新の橋下徹・松井一郎両氏を応援していたとか、維新議員が学園側の意向を受けて動いたケースが複数あったなどの事実関係も指摘されている。

 教育勅語について、大阪府議会では何か質問があったのかと議事録を見てみた。すると2013年3月4日、維新の西田薫大阪府議が教育勅語を肯定的に扱う議会質問をおこない、当時の教育長や松井一郎知事は否定しなかったという場面があった。
大阪府議会本会議 2013年3月4日

◆(西田薫君)
(前段部分略)これは教育勅語の十二の徳目であります。私は、この内容、本当にすばらしいものであるというふうに思っております。最近は、親が子を殺し、そして子が親を殺すという信じられないような事件が発生し、この社会全体が非常に殺伐としてるんじゃないか。こういう社会だからこそ、今こういった精神、こういった思いというのをしっかりと教育の場で教えるべきであるというふうに私は思っております。
そこで、早速、教育長に質問でございます。
私は、この十二の徳目、非常にすばらしいものであるというふうに思っております。ぜひ、この今の教育現場におきまして、これを盛り込んでいただきたいというふうに思っておりますが、教育長の御所見をお伺いします。

○議長(浅田均君) 教育長中西正人君。

◎教育長(中西正人君) ただいま議員から、教育勅語の現代語訳やと思いますけども、お示しをいただきまして、私、教育勅語の内容について詳しくは存じておりませんでしたが、ただいまのお話、お伺いをしまして、時代を超えて大切にしなければならない、現代の教育にも通じる部分があるということはよくわかりましたし、勉強になりました。
家族愛なり、友情、思いやりなど現在の学習指導要領にも重なっている部分、反映されている部分はあると思いますし、今私どもが進めているこころの再生府民運動とも通じるものがあるなというように思いました。

◆(西田薫君) 今回、この質問の通告に当たって、私、何度も部局の皆さんと話し合いをさせていただきました。昭和二十三年の衆議院、参議院の排除、失効の決議の話であったりとか、最終的には日本国憲法の話までさせていただいたんですね。その場で、僕、これ以上は答弁求めませんという話をしましたので、もうこれ以上は答弁求めませんが、ただ内容はすばらしいもんだというふうに私は思ってるんですね。やっぱり今の教育において、しっかりとやっていくべきじゃないかなというふうに思っております。
(中略)
ところで、松井知事、松井知事は政治家であられます。松井知事は、この教育勅語、先ほどの十二の徳目について、どういった思いを持たれているのか。通告はしてなかったんですが、もし御答弁いただけるんであれば、よろしくお願いします。

◎知事(松井一郎君) 西田議員から資料をいただきまして、改めて見せていただいて、読ませていただいて、これ明治天皇の勅語ですから、今から百年以上前に勅語を発表されたもの、改めてこうして読ませていただきますと、昔は、毎日毎朝これを声に出してみんなで唱えてたわけですよね。ごくごく自然なこと、当たり前なことだと思うんですけども、僕も、きょう見させていただいて、自分自身が全てできてるのかなと、先祖を大事にしてるかな、親を大事にしてるかなと、一番は夫婦仲ええかなと、こういうところで……。だから、毎日こういうのを忘れないように日々の生活をしていかなければならないなと改めて思いました。

 2013年当時はすでに維新の府政で、前年2012年に大阪府での私立学校設置基準が緩和され、森友学園側が学校設置の構想を具体化し始めていた時期にもあたる。大阪府はこのような姿勢だから、森友学園問題の遠因にもなっているという気がしてならない。
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